瞬刻の平穏
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桃香の目指す所には絶対に必要な選択肢、それが他の国との同盟。今回の事は最終目的の為の大きな足掛かりとなる事は確定的であり、さらには優しい彼女が民を守る為、そして味方全ての犠牲を減らす為に行うとすればそれしかない。黄巾の時に曹操と関わりがある為、余計にそれを選んでしまう。
すっと立ち上がった秋斗は窓に近付いて外を見やった。視界に広がるのは穏やかな日差しが差し込む中庭、もうすぐ戦が始まるとは思えない程に平穏な世界。
僅かに微笑んだ秋斗は振り向かずに雛里に話しかけた。
「月と詠を先に送っておいて良かったな。送りにやった第五の奴らは……まあ、袁紹軍と一番遠いから分かれて本隊へ向かう護衛の百も直ぐ合流出来るだろう。……後は同盟交渉の結果がどうなるかだ」
最後に秋斗の声が冷たく重たくなった。来る敵を思ってか、それとも何か別の事を思ってか。
秋斗は月と詠には二つの選択肢を示していた。袁家の目を考えて先に本隊と合流するか、それとも秋斗の知り合いの所に預けるかという二択。
徐州に残るとしたら、一時的に城を抑えられてしまうと僅かでも正体が露見する可能性がある為に侍女として留まる事は不可能。先に本隊と合流し、兵の食糧配給の為の手伝いをさせ、朱里と共に軍の展開を話し合わせておく方が得策と言えた。
もう一つ。秋斗の知り合いの所に預ける……というのは、個人的な繋がりから一番安全な場所があるからであった。
その場所の名は『娘娘』という高級料理飯店。現状、大陸で一番安全な曹操の元に、旅人に偽装させた徐晃隊数名を護衛に当て、商人の馬車に乗せて送り出す事。後に戦が落ち着いてから機を見て呼び寄せる事を考えていた。
選択を示されて二人が選んだのは前者。徐晃隊と共に居ると非力な自分達では足手まといになるやもしれない事も考え、自分達は少しでも描く未来を作り出す手伝いをしているのだから安全な所でぬくぬくとしている事は出来ない、と強く言って先に本隊へと向かっていた。
「同盟締結の対価。割に合うモノを朱里が提案して承諾されれば成功、出来なければ失敗、か」
少しの寂しさを宿している秋斗の声を聞いて、雛里は急な胸の痛みに自身を抱きしめた。その声に、もしかしたら彼と自分は違うモノを思い描いているのでは無いかと考えて、震える声を彼の背に掛けた。
「朱里ちゃんは何を対価として支払うかを私達に明言していませんが、恐らく今回の同盟交渉では対価として徐州を売り渡すつもりでしょう。しかし曹操さんはそれを対価としては認めてくれません。
例え乱世を早く大きく治める為、桃香様に益州等の南西の平定を代わりに行わせるつもりであっても」
「……うん。そうだな」
短い返答。二人共がこの時に答え合わせをするつもりでいた為に、彼も雛里の答えに口を挟まず。
「そ、
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