瞬刻の平穏
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の瞳と、絶望の闇色の中に覚悟の燃える秋斗の瞳が交差して、数瞬だけ見つめ合った後にどちらもが視線を落とす。
「返答が遅いと思ったら……まさか伝令すら潰されていたとはな。どうやらあちらさんも簡単には行かせてくれないようだ」
口角を吊り上げて遠い目をしながら床に溶け込ませた言葉。既に起こってしまった事だと割り切り、ここからどうするかが一番重要である為に二人は瞬時に思考を回していく。
「……本城から十里ほど離れた場所に潜ませた徐晃隊、四つの部隊を再度結集している時間はありません。物見に向かわせた兵も全て帰って来ないので袁紹軍がどの程度動いているか分からず……どうしますか?」
「分けたのはそのままで構わんさ。どうせこの後両袁家に対して奇襲を仕掛けられるんだからな。
大切なのは袁家を徐州から早い内に追い出す事だろうし……本城に残す徐晃隊五百もそのままでいい。敵の行軍を遅らせる為の悪戯も上手く行く。田豊が袁家の為に戦っていようといまいと、どちらにしろ時間が稼げる事に変わりない。
雛里の計算ではどの程度行けると読んでるんだ?」
「初めの情報の後に敵が部隊を分けているのでしたらギリギリ間に合うか、くらいかと。経路が変わったのでぶつかるとしても一回です。敵は私達が戦場を維持しながら同盟交渉を行う事を想定しているでしょう。大徳の名を考えると戦わずして本隊を豫洲の国境まで動かすのは異質な事ですから。
幽州での戦から見るに、袁紹軍の本隊は此処に物資の調達と私達の補給経路断絶を必ず狙ってきますので最低でも三日は遅れるでしょう」
「ならいい。だが……やはりそうだよな。民の希望が初めから他に頼ってちゃあいけないけど……早い内に結果を示す事さえ出来れば、少しの不振は与えてしまうが人々に受け入れられるから問題ないわけだ」
秋斗は大きく息を付いて顔を上げた。ぼんやりと宙を見つめ、頭の中でこれからの展開を組み立てて行く。
伝令を送ってから直ぐ、彼らも極秘で行動を起こしていた。奇襲を仕掛けられるようにただでさえ少ない徐晃隊を振り分けていたのだった。
その狙いは多数の軍が入り乱れる戦の場に少数での連続奇襲を掛けて混乱を誘発し、袁紹軍だけでも早期決着で追い返す事。分けた部隊は千を四つ。本城の警戒を強めて情報漏えいも防いでいる。
同時にもう一つ。本城にも袁家を縛り付ける為の手を打っていた。五百の徐晃隊員に申し付けたそれは、掌で踊らせてくれた夕へのちょっとした意趣返しを込めて。
二人は始めから桃香が二番目を選ぶと予測していたから準備をした、いや、そうなる事は分かりきっていたからこそ徐晃隊の特殊な絶対服従を使った動きを組み立てた。最長日数の制限さえ行えば、どのような事態になろうとも徐晃隊は一人の例外無く秋斗の元に集う事は確実なのだから。
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