暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百十二話 奈落
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦 487年  1月 6日    オーディン  オフレッサー元帥府  アウグスト・ザムエル・ワーレン



元帥府に出仕すると会議室に集まる様にと周知が出ていた。同僚達は既に会議室に向かったらしい、慌てて俺も会議室に向かった。会議室にはメックリンガー、アイゼナッハ、ロイエンタール、ビッテンフェルト、ミッターマイヤー、ミュラーが揃っていた。

席に座ると隣のミュラーに話しかけた。
「何が有った?」
「小官も分かりません。どうやらフェザーン方面で動きが有ったようですが……」
ミュラーが首を振って語尾を濁した。フェザーンか、貴族連合軍が好き勝手にやっているらしい。フェザーン人が暴動でも起こしたか。

皆が苦い表情をしている。可能性は有るな。連中、クロプシュトックでも略奪が酷かったと聞いている。フェザーン人が耐えきれなくなって暴動を起こしたとしてもおかしくは無い。ドアが開いた、入って来たのはオフレッサー元帥だった。その後にミューゼル提督、ケスラー参謀長、クレメンツ副参謀長が続く。慌てて起立して敬礼で迎えた。

皆、緊張している。これまでオフレッサー元帥が俺達と直接接することは無かった。常にミューゼル提督を通して命令は下された。それなのに……、暴動ではないかもしれん。答礼が終わり皆が席に着くとオフレッサー元帥が話し始めた。
「本六日未明、フェザーンで戦闘が始まった」
皆が顔を見合わせた。戦闘が始まった?

「貴族連合軍に対して自由惑星同盟軍が襲い掛かった」
「……」
「貴族連合軍は不意を突かれ圧倒的に劣勢の様だ」
「同盟軍は自領内部に貴族連合軍を誘引すると聞いていましたが?」
メックリンガー少将が訪ねるとオフレッサー元帥がフンと鼻を鳴らした。機嫌は良くない。

「そう思わせて密かにフェザーンに近付いていたのだろうな。まんまと騙されたわけだ」
「……」
皆が顔を見合わせた。引き摺り込んで叩く、戦争の常道ではある。そう思わせておいて不意を突いたという事か。

「或いは艦隊をフェザーンへ一瞬で移動させたか。あの男なら出来るかもしれんな」
「……」
「冗談だ、面白く無かったか」
冗談だとは分かっている。しかし俺は笑えない、皆も笑わない。黙って顔を見合わせている。元帥がフンと鼻を鳴らした。

「戦況は貴族連合軍の劣勢との事ですが……」
「貴族連合軍は包囲された。どの程度生き残れるか……、全滅でも俺は驚かんな」
ロイエンタール少将と元帥の会話に皆が顔を引き攣らせた。全滅? 戦死者は二千万を超えるぞ。

「冗談ではないぞ。ブルクハウゼン侯達は地表に降りていた様だ。艦隊は指揮官無しでバラバラに戦っている。ヴァレンシュタインを相手に生き残るのは難しいだろう」
「まさか、本当ですか、それは」
元帥の言葉にミュ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ