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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#1『メイ』
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という表情をした後に、苦笑しながら続けた。

「言い方が悪かったね……そうだな。前世の記憶、という物を知っているだろうか?」
「ああ……それなら、何か聞いたことあるかも」

 そう。一度死んだ人間が、再び命を得て、新たな個体として誕生するという理論。その時に、生まれ変わる前のことを覚えている現象を、《前世の記憶》を言ったはずだ。提唱されたのは気の遠くなるほど昔。紅日で信仰されていた宗教を始めとする、いくつかの宗教や思想が提唱する、《輪廻転生》によるものだったはずだ。

 遥か以前の世界では、「これは創作物の中にしかない出来事である」とされてきたらしいが、《ラグ・ナレク》直前の、再発達した魔術文明によって、輪廻転生は一定周期、およそ五百年から六百年をもって行われていることが明らかになった。その場合、魔術を使用するにあたって重要となってくる《真名》が共通している人間は、転生前・転生後の関係にあるらしい。

 もっとも、この題材はあまり深く研究されず…《真名》というワードが出てきたあたりで研究が取りやめになったらしい。《真名》の解明はかつての魔術協会が禁止していて、現在は《教会》によって禁止されている…さらに詳しいことは分からなかったらしい。いわば、『キワモノ扱い』という事だ。

「私たちは、転生したとでもいうの?」
「うーん。話しの大筋とはちょっと違うんだけど、《僕達》に関してはその通り」
「つまり、この世界にもそれとよくにた現象が起こっている、ってこと……?」
「……話が速くて助かるね。僕は最初…もっともひとつ前の世界でだが…これを君……いや、ひとつ前の君から聞いたとき、全く理解できなかった」


 《魔王(キング)》が苦笑する。そして彼は、再び説明し始めた。

「世界が崩壊した時に、大量の歴史を記した資料が消滅してしまった。けれど、《事実》は変わらない……星条旗国家という国を知っているかい?」
「ああ……アメリカのこと?」

 星条旗国家連合は、かつての地球でアメリカと呼ばれていた巨大な先進国家だ。本土の一部を丸ごと取り出して《箱舟》にのせるという荒業をやってのけたことでも有名だ。特に一日ではまわりきれない巨大なテーマパークがあることで有名で、メイも一度は行ってみたいと思っている国である。

 それがどうしたのだろうか、と思っていると、《魔王(キング)》が満足そうに頷いて、説明を再開した。

「そう。アメリカだ。あの国の先住民族地区に行って、そこにいる人たちに聞いてみな。『いま世界は何周目?』とね。彼らは、『いま世界は十三周目だ』と言うよ」
「十三周目……」

 それはつまり、十三回この世界が生まれ変わっているという事だ。

「世界の文明は、ことあるごとに異様発達する。文明のブレイクスルーが起
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