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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#1『メイ』
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としても、その外見は必ず異なる。それは、使い手が死んでからもそうだ。歴史上、全く同じ刻印の存在はいなかったという。唯一の例外は《一子相伝》と言われる、自らの子孫に同一の《刻印》を授ける秘術だが、それは一人につき一度限り。これでも一度に同じ《刻印》を存在させる術にはなり得ない。

 しかし、この青年の《刻印》は、寸分たがわずメイのものと同一だった。

「なんで……?《刻印》っていうのは、同じものは現れないんでしょう?歴史上の人物にも、同じ刻印を使った人なんてない、って聞いたわ」
「僕たちがお互いを見分けられるようになってるんだ。今回は僕が先に『目覚めた』から、僕が《魔王》で君が《姫君》。一個前では君が《王女》で僕が《魔法剣士》だった」
「え?え?……ちょっと待って」

 一個前……?それはなんだ。自分はこの青年と初対面だ。彼は何度もあったことが有るようなことを言うし、メイ自身もあったことがあるような感覚を受けているが、間違いなくこの青年とは初対面なのだ。

 だが、彼の言う《王女》と《魔法剣士》という称号は、どこか聞き覚えと言うか、見覚えがある者だった。

 そう、それは、ついさっき見たばかりのステンドグラスに描かれた、完成した物語。その最後の一つではなかったか――――。

「一個前、っていうのは……どういうこと?」
「ああ、そうか。本当に覚えてないんだっけ。情けない。僕もそうだったというのに……『メイ』もこんな気分だったのかな……まぁ、全部を僕がおぼえてるわけじゃぁないんだけどね。新世(しんせい)での生活に支障をきたさないように、多少、というか多くの記憶は消されている。残っている記憶も、どちらかというと誰かのそれを見ている映像(ヴィジョン)のようなものだ……」

 まるで意味が解らない。

 記憶?シンセイ?何だそれは。全く聞き覚えがない。

 だがそれは、メイに彼の言っていることは、そしてステンドグラスの物語は真実なのだ、と思わせるのに十分だった。そしてそうなると、メイは話がなかなか進まないことに苛立ちを覚えてくる。

「勝手に話を進めないでくれる?私は説明を求めているのだけど」
「ああ、そうだ。そうだった。ごめんね。君はそういう()だったね……じゃぁ、説明しようか」

 《魔王(キング)》がメイの頬からやっと手を離す。触れていた部分はまだ熱いし、鼓動も幾何か治まってきたもののいまだ速いままだ。

「君は……『この世界のメイ』は、世界が生まれ変わっているのを知っているかい?」
「え?」

 世界が……生まれ変わる?世界の支配者が台頭することは無数にあれど、世界が『生まれ変わる』なんていう出来事は聞いたことがなかった。
 
 呆けた反応を返すメイに、《魔王(キング)》はああしまった、
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