#1『メイ』
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には、翼の様な跳ねっ毛がある。
ほかの絵も、少女と青年の立ち位置や位が異なり、どちらが絵の主人公となっているかを除けば、ほとんど同じ絵だった。頂上近くの絵には、黄金の髪の王女と、光を宿す剣の青年、眼鏡の男、そして時計の周りを跳ぶ精霊の姿が描かれていた。
最頂点には、赤い髪の少年の前に、金髪の少女が立つ絵。しかし、それはまだ完成していない様に見えた。
そしてメイは絶句する。これは――――今、この場で起こっている出来事ではないか?これは、過去に起こった出来事なのか?
そう考えていたせいで、気付くのが遅れた。
いつの間にか《魔王》が、メイの目の前に立っていた。黒いグローブに覆われた手を、静かに、ゆっくりと持ち上げ、頬に添えた。凍り付くメイ。触れられている部分がやけに熱く感じる。鼓動が速くなる。
ソーミティアにいたころは、こんなふうに男の子に触られることなんて一度も無かった。リビーラやシュートですら、メイに触れたのは手、というか腕で、どちらもエスコート的な状態だったように思う。
だが、これは――――まるで、何かの予備動作の様ではないか。
しかし、彼が問った行動はメイが想像した者とは違った。《魔王》は、メイの顔の左半分を覆っている長い金髪をかきあげて、メイの耳にかけたのだ。
それにより、メイの顔の左半分があらわになる。
そこにあったのは、稲妻型の消えない《刻印》。本来《刻印》という物は、込められた《刻印魔術》を使う時以外その姿を消している。それに、普通は腕などに現れるものなのだ。顔には表れない。しかし、メイのそれはいつまでたっても消えないし、しかも顔に現れる。女にとって命ともいえる顔に、消えない稲妻模様。メイに普段あまり人が寄らないのも、この刻印のせいだった。
「消えない刻印……それに、稲妻模様。金髪碧眼で、なおかつ強気……間違いないね。もっとも、確信は初めて会った時にしてたんだけど。そうでもしないと、会話が成り立たないだろ?」
そもそも会話は成り立ってすらいないわよ――――
そう言ってやろうかと思ったが、体がしびれて動けない。このまま、彼に身を任せてしまいたい――――そんな奇妙な欲望が鎌首をもたげた。しかし、それはやはり彼の行動によって打ち消される。
《魔王》はメイの頬に添えていない方の手を持ち上げると、自分の赤い髪をかき上げた。
「僕にもあるんだ、それ」
そして、あらわになった彼の顔の左半分には――――メイのものと、全く同じ稲妻型の《刻印》があった。
「うそ……同じ《刻印》……!?」
あり得ない。ありえないことだった。《刻印》は、似たような形状のものはあっても、同じものは一つとして存在しない。効果が全く同じであった
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