#1『メイ』
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
こういうところも、全く変わってないね」
そう言って、再びクスッと笑う《魔王》。その笑顔は、随分幼い少年のものに見えた。そしてまた、メイの胸が締め付けられる。
――――やっぱり、知ってるんだ。だけど……
「……だけど、今の私は、あなたを知らない」
「まぁ、そうだろうね。君は全部忘れてしまった。僕たちのつながりすらも」
《魔王》が近づいてくる。彼が一歩を踏み出すにつれて、階段の脇につけられた魔法の灯が、明るい輝きを強くする。その光が、階段以外をよく見ることのできなかった、《魔王》の居室…恐らくは、だが…を照らしだした。
その豪奢さに、メイは息をのむ。
天井は、ソーミティアで一番高かった、《教会》支部の大ホールよりも高い。15メートル以上あるのではないだろうか。ソーサーが地下基地に入ってから、着陸するまでにどれだけ降りたのかわからなかったが、最低でもこれと同等は降りていただろう。
その天井をめざして、いくつもの魔法の灯台が、光を強くした階段の灯に反応するように、その火をともしていく。柔らかな魔力の光が、部屋をよりはっきりと照らし出す。
階段はよく見ると黄金で覆われているようだった。節々に宝石が取り付けられたそれは、途中で橋渡しを経て左右へと別れ、さらにそこから上へ、上へと昇って行く。もっとも高い所では8メートル近い。そしてそれらの階段を守護するように、巨大な本棚が伸びる。
その本棚は、ただの本棚ではなかった。そこに収められているのは、本だけではない。もちろん、本も大量に保管されている。いつ書かれたのか知れないほどの古い本が、数えきれないほどおさめられている。だが、それ以外にも、やはりいつの時代の物なのか分からないほど古い天秤や、たしか紅日という国で崇められていた仏像という像、他にも宝石のはめられたステッキや、何に使うのかよくわからないものまである。中央には、奇妙な形の武器がいくつも収められていた。三本の刃をもった片刃の剣…確か刀と言うのだったか。だが刃は三本ないはずだ…や、醜悪に歪められた十字架を、ツルの様にも触手の様にも見える装飾が絡める大剣。大きなクリスタルが頭部にはめ込まれた鎧もある。
そして、最も目を引くのが、部屋のあちこちに直接はめられた、巨大なステンドグラスだった。枚数は十に満たないが、そのどれにも、物語のワンシーンと思しき絵が、美しく描かれていた。
それをみて、メイは目を見開く。そこに描かれた存在達が――――どこかで見たことのある姿をしていたからだ。
一番下にある最初のステンドグラスには、赤い髪に、黄金の服を纏った青年。その横には、金色の髪をなびかせた王女が侍る。そしてその後ろには、眼鏡をかけた金髪の男が立つ。その頭頂
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ