TURN142 最後の出撃その十二
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「時々来ることになる」
「ではその時は」
「宜しく頼む」
ソビエトは共有主義を維持したまま第三勢力として生きていくことになった、だがその政策はかなり穏やかになり共有主義の問題点も訂正し資産主義の要素も入れたものになっていた。対立ではなく融和、それがカテーリンが選んだ政策になっていた。
そのソビエトまで見てだ、宇垣が言う。
「うむ、戦後は三つ巴か」
「太平洋、欧州、ソビエトだな」
「はい、そうなります」
こう伊藤に話すのだった。
「その太平洋と欧州の中も大変ですが」
「それでもだな」
「世界は三つの経済圏のそれぞれの競り合いです」
「しかし武力を用いての戦争は起こらない」
「経済力のぶつかり合いです」
「言うならば経済戦争だな」
「武力は使われません」
このことは間違いないというのだ。
「ソビエトも共有主義を広められません」
「問題点が明らかになったからな」
「ソビエト自体も大きく変わっています」
実質的には社会民主主義と言うべき国になろちとしている、それが今のソビエトの状況だ。
「ですから」
「最早恐ろしい存在ではないな」
「そうかと」
「太平洋と欧州があり」
伊藤はさらに話す。
「そしてそのバランサーとしてソビエトが存在するか」
「まさに三つ巴ですな」
「うむ、ソビエトは面白い国になるな」
「かつての不気味さはなく」
「ははは、そうですね」
ここでゾルゲが影の様に出て来て二人に言うのだった。
「私もこれからが楽しみです」
「そういえばゾルゲ大佐は軍に留まられるのだったな」
宇垣はそのゾルゲに彼の今後のことを問うた。
「諜報部に」
「その予定です」
「そうか、では我々ともだな」
「これからは時として味方、時として敵になります」
ソビエトの国益に従って動く、だからそうなるというのだ。
「敵になった場合はお覚悟を」
「これは強敵だな」
「そうですな」
伊藤と宇垣はゾルゲの言葉を受けて今は笑顔で言う。
「こちらも明石大佐がいるが」
「油断しないでいきましょう」
「この御仁には私しかいませんな」
明石も出て来た、それで言うのだった。
「では」
「うむ、その時はな」
「頼むぞ」
「おっと、そうでしたね」
ゾルゲはライバルである明石を見て楽しげに微笑んでまた言った。
「日本には貴方がいます」
「遅れは取りませんぞ」
明石も思わせぶりな笑みを言葉に込めて話す。
「その時は」
「そして戦争の後だが」
平賀は今も久重の口から話す。
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