暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
敵情視察 ─柳洞寺のサーヴァント─
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あビックリだ」

 柳洞寺からそこそこ離れた場所にある家屋の屋上。

 まずは遠巻きから観察しようとフェンサーと二人で感知と探知をための糸を張っていたのだが、柳洞寺には俺たち以外の客人が来ていた。

「あれ士郎だよな。寝間着のまんまで何やってんだアイツ」

 夢遊病者のようにフラフラとした足取りで、けれど目的地だけはハッキリしているように歩いていく。

 眼球強化で視認してみても、感知術で魔力波長を調べてみても、衛宮士郎本人である。
 明らかに普通ではない様子だが、一体これはどういうことなのか理解が及ばない。

「……どうやら内に招かれているようね。彼はキャスターの操り人形になっている、あれじゃあ操られている本人にはどうしようもないわ」
「は? あれ、束縛とか催眠とか、そういう類の魔術なのか!?」


 士郎は寝間着のままだ。
 ならアイツは家で眠っているところを、ここまで操られて歩いてきたのだろう。

 柳洞寺から士郎の家までは、少なくとも数kmは離れている。
 つまりキャスターはそれだけ離れた位置にいる士郎に魔術をかけ、ここまで苦もなく操縦したということになる。



 本来魔術師には、自身に干渉する魔術に対する抗魔力(レジスト)がある。
 魔力を生成する魔術回路は、同時に他者の魔力を弾き返す特性も持っている。

 故に術者の行動を抑制する魔術はたとえ格下相手だとしても、術式の完成前に弾かれてしまうのがオチだ。
 接触状態であればいくらかの制限を掛けることも出来ようが、対象が離れた場所にいればほとんどの場合他者に掛ける魔術は成立し得ない。

 それを数km以上離れた場所から、完全に術中に落とすその手際。

 相手がサーヴァントとはいえ、同じ術者として現代の魔術師とキャスターを比較したなら、蟻と戦車ほどの戦力比、もはや比べるのも馬鹿らしくなるほどの差がある。

 文字通り、キャスターは次元違いの魔術師だった。

「どうするのマスター?」
「……様子見だな。助けてやる義理はないし…………てか、下手に手を出した方が士郎がどうなるか分からん。
 セイバーも今頃はマスター不在に気付いて、士郎を追い掛けてきているはずだ」
「────確かに、物凄い速度で駆けてきてるわね。数分足らずで追い付くでしょうけど、その数分間、あの子は生きていられるかしら」

 それは神のみぞ知るってヤツだ。
 運も実力の内って言うし、ていうかぶっちゃけ今回は操られている士郎の自業自得だ。

 魔術師として未熟過ぎるからキャスターなんかに目を付けられたんだろうし。
 あんなのがセイバーのサーヴァントを従えていると知れば、誰だって何かしら思うところはある。

 利用するとか令呪を奪うとか、罠に嵌めると
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