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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十二話 戦争の夏の始まり、或いは愚者達の宴の始まり
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の人格形成に影響したであろう“地球”で送った人生の記憶がさながら一つの人格であるかのように豊久に語りかける。
――馬鹿げているな。こんな泥沼の滅びかけた国に愛着なんぞ持っているなんて。

「何か質問は?」
 馬堂中佐が手をあげると荻名中佐が頷いた。
「――第十四聯隊長です。敵は大規模な竜兵を持ち込んでいると聞いています。
竜兵による偵察などは確認されているのでしょうか?」
 ――此方の逆襲を読まれて逆に奇襲をかけられたりしたらたまらないからな。

「現在のところ、竜兵が投入された情報は確認されていません。また、導術観測によると、美奈津付近に集中して配置されている事は確認しています」
 ――ふむ?本営に随行しているわけではない、と。まだ北領に居るのか?
 無意識に瞼を掻きながら豊久は眼前の龍口湾の地図に目を向ける。
 ――温存する?いや、そんな筈はない、揚陸作戦は初手で下手をうてば惨劇になる。
だとしたら――偵察用途ではないと?ならばどう使う?何故わざわざそんな怪しげな部隊を呼び寄せたというのだ?あの姫様が道楽で戦場に玩具を持ちいれるわけがない!
 背筋にはしる悪寒を無視して席に着く。他の士官達との応答に耳を澄ませ、自分の聯隊に何を命じられるのかを考えていた。



七月十八日 午前第四刻半 最前線から後方2里
独立混成第十四連隊 連隊本部 情報幕僚 香川大尉


偵察を終えた中隊の報告から確認を済ませ、連隊本部へと報告に行く。
既に導術によって偵察の結果は伝わっているが、詳細な部分の確認をし、それを分析してから報告するのが自分の役目だと情報幕僚である香川は考えていた。
 本部を置いている天幕に入ろうとすると声が聞こえる。
「――半刻もすれば天狼以上の大決戦の始まりだ。いやはやなんとも素晴らしい時代に産まれたものだな?――さぁて上手く機先を制す事が出来れば良いが」

「少なくとも序盤は上手く行くだろうと思います」
 聯隊長と首席幕僚の声であった。

「問題は近衛だな。攻勢に出るにしても単純な頭数も不安があるし、士気も怪しいものだ。
かといって向こうの鬼札になり得た五○一大隊もまだ純粋に練度に不安がある、これはこちらもあまり向こうさんの事を言えないがね。皆が良くやってくれたから」

「少なくとも聯隊全力訓練では最低限の基準は超えた結果を出しています。言い方は悪いですが実戦で鍛えればどうとでもなりましょう」

「この戦争が長引くのならば、な――端から景気の悪い話だったな」
 悲観的な会話を交わしているところに入り込むほど香川は無神経ではなく。軽く咳払いをして中に入る。
「失礼します。連隊長殿、連隊鉄虎大隊第四中隊、帰還しました。
導術捜索と併せて現状、敵軍はほぼ完全に夜営にはいったま
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