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とらっぷ&だんじょん!
第一部 vs.まもの!
第12話 つかのまのきゅうそく!
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石が妹の病気を治してくれると信じているアッシュの顔。
 そしてファトゥム。
「この説を、ウェルド君はどう思いますか?」
「……初めて聞いた時には随分突飛だと思いましたよ。でもまあ、数十年前までは不老不死も人間が魔法を使う事も、魔物が実在するなんて事も、おとぎ話だったわけですし。何が真実でもおかしくないと思いますよ」
「ノエルさんはどうです?」
「そうですね……。ですがやっぱり、いくら太陽が沈むのが嫌だからって、別の太陽を造ろうなんて思うのかしら。まして地下に……」
「考えづらいですか?」
「というよりは……信じられないんです。太陽を造るだなんて、まるで神様気取り。傲慢だわ。いいえ……彼らは神になろうとしたのかしら。あるいは、神になったと」
 クムランはにっこり笑った。
「神様ならば、何かやらなければならない事があるはずですよね」
 そして、壁際で腕を組み、無言でなりゆきを見守っているディアスにその笑顔を向ける。彼は一言だけで答えた。
「世界創造」
「だとしたら、成功したと思いますか?」
「彼らの思い描いた成功がどういうものであるかが定かではない以上、それについて答える事は出来ない。敢えて現代の人間として所感を述べるならば、遺跡に存在するのは魔物ばかりな上、かつて人が生活した痕跡もない――彼らが居住可能な空間を造り得たようには到底見えない」
 ディアスはまっすぐクムランを見つめ返す。
「その通りです。それについての答えもそのヒントも、まだ見つけ出してはいません」
「手立ては」
「探索を続けるしかないでしょう。これまでに人が足を踏み入れる事が出来たのは、太陽神殿から一つ下、『煉獄』と呼ばれる階層だけです。何せ煉獄は広大で、大部分が前人未踏のまま」
「逆に言えば、それだけ大きな発見が待ち構えているかもしれないって事ですよね」
 ウェルドはクムランと視線を合わせ、笑みを見せた。
「早くそこにたどり着けるようにしますよ。面白くなってきた」
「あたしもよ! その為に来たんだもの」
 何となくディアスを見る。
 彼は何も言わなかった。
「みなさんとご一緒に研究できる日が来るのを、楽しみにしています」
 クムランが笑顔で締めた。

 ※

 宿舎に帰ってみて驚いた。実に食欲を誘う匂いがエントランスに満ちている。地下に下りる階段から、その匂いは立ち上ってきていた。
 ぱたぱた足音をたててサラが上がってきた。
「みんな! ごはんができたよ!」
「ご飯?」
「地下に使われてない厨房があったでしょ? あたし、みんなに手伝ってもらいながらお掃除したの! それで今日からね、みんなお金が貯まってきたし、少しずつ出し合って調理器具や食料品を買うことにしたの」
「へえ、いいじゃん。俺も出すぜ。今まで昼とか夜はオイゲンの親父の
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