日没に絡むイト
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断して。さらには……洛陽で見られていた事も含まれるか。
――あのクズめ。あたしを見誤ってるにも程がある。元はといえばあいつが夕に取って変わって無ければこんな無茶な事にはならなかったんだ。せめてあの状況で最善の選択をしてやったっていうのに……どこまで自分本位に考えてんのさ。
心の内で毒づいて、抱きしめた腕に少しだけ力を込めた。
「ふーん。なら如何したらいいと思う? 疑念猜疑心ばっかりのあいつは簡単な事じゃ納得しないでしょ」
「……最悪の場合はあいつの目の前で秋兄を殺せばいい。そうすれば郭図が向ける疑いも大きく晴れる。明はとりあえず私と一緒に劉備軍本城に向かって貰う」
冷たく、氷を背筋に落とすかのような声。夕は戻ったのか。
秋兄くらいだったら殺していいと思ってる。ただ、心の底から……ではないようだ。
それならきっと南皮で何かあったんだ。何があった。決まってる。あの人の容体がまた重くなったのか。話さなかったのは迷っていたからか、それともあたしに頼るのが辛かったからか。
「夕……もしかしてあの人に――」
「違うよ? お母さんは大丈夫。違うの、ただ……見つかったの。一割くらいだけど……お母さんが……助かる方法が……漢中で」
震える声で告げられた。同時に、その意味を理解して安堵した。
不治の病を治す程のモノを、砂漠の中から砂金を見つけるように、夕は死に物狂いで探してきた。それが……漸く見つかった。
「ふ、ふふふ……やったね夕! これでもう大丈夫じゃん!」
周りに悟られないように明るい声を出すと夕の雰囲気が緩んだ。はらりはらりと零れる涙が彼女の服に落ちて行くのが見えて、胸に沸き立つのは歓喜と切なさ。
やっとあたしの大切なモノは救われる。そうすれば……本腰を入れて全てを壊す事が出来るんだ。
最悪の場合、夕と沮授様を連れて逃げ出せばいい。前までは体調の問題で連れ出せなかったけどそれが出来るようになると言う事。
沮授様も夕と同じくらい頭がいいから、どこでも士官先はあるだろう。
希望が見えて、一番大切なモノを思い出した。だから夕はもう惑わされない。でも……きっと内心では欲しいはず。
冷たい夕に戻らなくていい。あたしみたいにならなくていい。なんだって欲しがってもいいから。夕の為になるのなら、あたしが全てを手に入れる手助けをしよう。
ぎゅっと小さな身体を抱きしめて言葉を紡ぐ。
「ねぇ、夕。もう我慢しなくてもいいよ。全部手にいれよう? きっと秋兄は分かってくれるからさ。……捕まえて、追い詰めて、逃げ場を無くして、そしたら手伝ってくれるよ。秋兄はあたしみたいな大嘘つきだからあのクズを騙すくらい簡単だろうし、あたしと本気の殺し合いをさせて従えさせてもいいしね」
言うと回した腕をか弱
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