日没に絡むイト
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、もはや為す術が無くなりますね。向けられた刃を回避した天才によって追い詰められる事になるんですから。
無意識の内に、にやりと口元が引き裂かれた。
敵であれば恐ろしい相手も、味方に付ければ大きな力となる。そう……孫策のように。
ただ、虎に首輪は付けられても、霊獣に首輪は付けられない。それならば、周りの全てを奪ってやればいい。目的を達成させる為の手段をたった一つにしてやればいい。
劉備軍本隊への伝令も潰し、夕による行動も迅速……もはや不可測を作り出すあの男に打つ手は無く、直ぐに自分達が有利になるだろうと七乃の胸の内に安堵が湧いた。
「おおっ、七乃! 敵が撤退してく! むふふ、やはり妾達が本気を出せばこれくらいの奇襲は簡単に弾き返せるのじゃ!」
――まあ、かなりの被害が出てるんですけどねぇ。さすがは劉備軍と言った所でしょうか。
穏やかな心そのままに、目を輝かせながら劉備軍が撤退し始めた戦場を見つめている美羽の肩に両手を置いた。
「うむ? どうかしたのかえ?」
「なーんでもないですよぉ。一応兵士さん達も疲れてるでしょうから無茶な追撃は無しにしましょうねー」
自分の守りたいモノだけをその両腕の中に。不思議そうな美羽の愛らしい顔を見て、先の経験からもっと念入りに考えを巡らせようと気を持ち直す。
ニコニコ笑顔を美羽に向けながら思考を巡らせ始め……もし、なんらかの働きがあって夕が失敗したら、形勢が逆転したら……自分達がどうするかを、幾つも、幾つも積み上げて行った。
たった一人しか世界に必要のない彼女にとっては、同志でさえもただの駒であった。
†
揺れる黒髪に擽られ、露出した肌がこそばゆくなる。
同じ馬に乗る夕は軽く抱きしめれば良く分かる程に小さく、少しでも力を込めれば壊れてしまいそうだった。
「それにしてもさー。計画より早すぎるよね」
先日合流してから郭図に詰め寄り、河北動乱の詳細を直接聞いて、今回の戦に於ける全ての決定権をもぎ取った夕は、あたしにさえ行おうとする展開を話していなかった。
同じ馬に乗せれば話してくれると思ったものの、何故か終始無言。
話してくれるまで待とうと思っていたが、直前に話されると危ういのでこちらから聞いてみた。
「明。私達の軍には沢山の間諜が紛れ込んでいる。それと郭図は……私とあなたを疑っている」
言われて分かった。
あたしが関靖の部下を逃がした事がバレた。それがあいつの中で問題として浮上したんだろう。もしかしたら、あたしが公孫賛と……いや、秋兄とも繋がっているのではないか、と。
毒である張純からの情報にあったのは公孫賛と秋兄の密接な友好関係。連日にわたり夜遅くまで飲んで帰るくらいなのだから、相当なモノだと判
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