日没に絡むイト
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様、真っ直ぐ来る子供にはどんな悪戯を仕掛けたらいいと思います?」
「むむむ……そうじゃのぉ。そのまま真っ直ぐ来させて落とし穴にでも嵌めてやればいいのじゃ! むふふ、ヘビやカエルをたんまり詰めておけば驚いて逃げること間違い無しじゃろうのぅ」
片手を上げ、指を一つ顎に当てて少し悩んだ後、意地の悪い笑みを浮かべた美羽。その表情を見て恍惚としながら、なるほどと納得した七乃は直ぐに指示に移った。
「やーん♪ 踏み固められた戦場に穴を掘る、出来るわけない事を言うなんてさっすが美羽様♪ 落とし穴を掘ってる時間はないですけど……いいですね、それ。伝令さーん、張飛部隊に対応してるモノに引き込んでから分かれるように言ってくださーい。後陣の皆さんは少し下がって……抜けてきた張飛部隊を直射と曲射の矢で出迎えてくださいねー」
美羽様の為に本当に穴を掘れたらなぁ、と考えながら、張飛隊を引き込むのは叶わない願いだ、とも内心では考えていた。張飛が突っ込んで来ようとも、関羽が出過ぎだと止めるだろう。一人でも兵を射掛けられたらこちらの勝ちである。
全てが今、七乃の掌の上。美羽の悪戯は波紋を齎す不可測であり、状況を動かす天然の軍師の才。それを七乃の判断で振り分けて撤退させる為だけに行う事が出来る。落とし穴は今回使えなかったが、いつか使える時に使おうと頭の片隅に留めておいた。
――そろそろ撤退してくれませんかねぇ。まあ、このくらいの被害なら問題は無いですけど♪
どれだけ多くが犠牲になろうと気にならないが、この次の戦を思えば残しておいた方がいいのは事実。
彼女の元には既に入っている指示があった。袁紹軍が幽州から徐州に向かったので防衛主体に切り替えろという彼女にとって一番欲しかったモノと……じゃじゃ馬姫の檻を強化しつつ孫策を戦場に連れ出せという時機の早すぎるが計画通りなモノ。
劉備軍と孫策軍の壊滅が当初の計画だったが、二つ目に示されていたのは――時機を早める事もありその場合は曹操軍にも打撃を与えられるとのこと。
洛陽で、そんな前から夕はこの状況を作り出す事を考えていた。一つ二つでは無く、どの場合にも対処できるように膨大な数の状況を七乃に伝えていた。
無表情で、無感情に淡々と説明する夕の冷たい瞳を思い出して、彼女の背筋にゾクリと寒気が走り、己が同志に畏怖の念が込み上げてくる。
――ホント……敵じゃなくてよかったですねぇ。徐晃さんの思惑だけが不穏分子でしたけどそれも問題なく対処出来たようですし。
同時に、徐晃の思惑が成功していれば全てが崩れていたのを思い出して、彼女の掌にジワリと汗がにじむ。
たった一つの綻びであれだけの天才によって考えられた策が崩れる事もある、乱世とは本当に生きているようだ、と恐怖して。
――しかし黒麒麟も
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