三十 狐雨
[7/7]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
前に干してきた服が雨で濡れてしまう。
「いいよ、気にしないで」
全く気にしていない風情を装って、ナルトは気丈にも微笑を返した。心底申し訳なさそうに顔を歪めたナルは、最後にもう一度、ナルトの手を握り締めた。ぶんぶんと大きく振る。
「ラーメン、また今度一緒に食べに行こうってばよ!」
「そうだね。いつか――――……」
名残惜しく放された手。千切れてしまうのではないかというぐらい大きく手を振るナルに、ナルトは手を振り返した。やがて見えなくなった彼女の、去った方向をいつまでも見遣る。
ゆっくりと手を下ろす。そうしてその手を、ナルトはじっと見つめた。宝物を扱うかのように、そっと握り締める。
「―――いつかそんな日が、来るといいね……」
黄昏時の狐雨が、彼の頬に筋を引いた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ