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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十  狐雨
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前に干してきた服が雨で濡れてしまう。


「いいよ、気にしないで」
全く気にしていない風情を装って、ナルトは気丈にも微笑を返した。心底申し訳なさそうに顔を歪めたナルは、最後にもう一度、ナルトの手を握り締めた。ぶんぶんと大きく振る。

「ラーメン、また今度一緒に食べに行こうってばよ!」
「そうだね。いつか――――……」

名残惜しく放された手。千切れてしまうのではないかというぐらい大きく手を振るナルに、ナルトは手を振り返した。やがて見えなくなった彼女の、去った方向をいつまでも見遣る。


ゆっくりと手を下ろす。そうしてその手を、ナルトはじっと見つめた。宝物を扱うかのように、そっと握り締める。





「―――いつかそんな日が、来るといいね……」


黄昏時の狐雨が、彼の頬に筋を引いた。

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