三十 狐雨
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ルトの静かな声が響き渡った。
「波風ナルに力を貸してやってほしい」
ナルトの言葉に瞳を瞬かせる。どんな無理難題を告げられるかと、心中身構えていた九尾は拍子抜けした。だがすぐさま《ハッ!そうすることで、ワシに何の利がある?》と嘲笑う。
「少なくとも『九尾は一尾に劣る』という噂が流れるのを食い止められるね」
一瞬返答に窮する九尾。その機を逃さず、ナルトは畳み掛けるように言葉を続けた。
「そんな噂が世間に広まるのは、九喇嘛にとっても不名誉なんじゃないか?」
押し黙る九尾の赤い瞳をナルトは覗き込んだ。九尾の全身が対照的な青い眼の中に映り込む。
《……狸如きワシの敵ではないわ》
「えらい自信だな。同じ尾獣だろうに」
チッと舌打ちする。一尾と犬猿の仲である九尾は不愉快そうに顔を歪めた。
《奴との力の差は明白だ。ワシが出るまでもない。小娘にチャクラを与えれば、それで十分》
上手く口車に乗せられているとも気づかず、九尾はきっぱりと言った。その明言に、内心満足を覚えるナルト。一尾を相手にするには、ナル一人では骨が折れるに違いないからだ。
はじめこそ自身が闘うつもりだったのだが、先ほどのナルの固い意志を聞いて、ナルトは考えを改めた。
未だ九尾を憎む里人は、その人柱力であるナルをどうしても好意的には捉えない。彼らに認めてもらうには何か大きな偉業でも成さねばならないだろう。それこそ里を救うような…。
木ノ葉の里人に、波風ナルという存在を受け入れてもらう。そのための積み重ねの一歩を取り上げてはならない。
九尾がナルに力を貸すように仕向ける。だからわざと自尊心を傷つけた。毛嫌いしている一尾より弱いなどと言われれば、誇り高き九尾は躍起になってナルに協力するだろう。
踵を返す。目的を果たしたナルトの背中に、九尾が鋭く叫んだ。
《おい!最初の問いに答えていないぞ。なぜワシの名を知っていた?》
警戒と疑念と好奇と…。様々な感情が複雑に雑ざった眼差しで、九尾はナルトを見つめた。
立ち止まる。肩越しに振り返ったナルトが九尾と目を合わせた。微笑。
「ナルをよろしく頼むよ。九喇嘛」
その瞬間、九尾は大きく目を見開く。彼の姿が、遠い昔慕っていた人物と重なった。思わず手を伸ばす。
《…じじい……っ!!》
その呼び掛けに、ナルトは応えなかった。
里の小高い丘。頂上ではないものの一望できる木ノ葉の里は、緩やかな時の流れで静かに息づいている。
平穏でのどかで、いっそ退屈なほど。
何気ない仕草で再不斬は里にゆっくり目を向けた。視線の先を追って自来也もまた、里を俯瞰する。
それを目の端に捉えてから、再不斬はようやく口火を切った。
「平
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