肆_犬猿の仲
二話
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白澤。中国に伝わる、人語を解し万物に精通する神獣である。
麒麟や鳳凰と同じく、徳の高い為政者の治世に姿を現すとされていた。実は遠い昔に初対面だった鬼灯と酒を飲み交わした挙句に足を滑らせて現世に落下し、当時の皇帝に捕獲されたことがある、と白澤は不機嫌に言った。
一万を超える妖怪の全てを書き表した白澤図というものは、まさに彼が皇帝に伝えたものらしい。
実際nの姿は獣である、と聞いてミヤコは仰天した。
白澤は前髪を片手で捲り上げると、額の赤い模様のようなものを指差して、ここにも目があるんだ、とニンマリと笑って見せた。
「何だかすごいんですね、白澤さんって」
ミヤコが言った。鬼灯は白いウサギを撫でながら、無言でいる。
「君もすごいよ。いろいろ聞いたけど、臨死体験だって?滅多にできることじゃないよね」
白澤は切れ長の目を細めてニッコリすると、ミヤコの肩に手を置く。
ミヤコは突然のことに目を丸くする。
「よかったら今晩、お茶でも・・・・・・」
彼がそこまで言った瞬間、ミヤコの目の前を黒い鉄の塊が横切った。
一瞬のことに呆気にとられながらも白澤を見ると、鬼灯の金棒が顔面を直撃している。
白澤は鼻血を流して引っくり返っていた。
「全く。呆れた神獣ですね、あなた」
鬼灯は何事もなかったかのように、またウサギを抱きかかえていた。
「いきなり何するんだ、この暴力鬼!」
「おっと。失礼しました。どうしようもない奴を見ていると、つい普段の拷問の仕事を思い出してしまって手が勝手に。職業病というものでしょうか」
「わざとだろ!!」
白澤はぶつぶつと悪態をつきながら立ち上がると、桃太郎がちょうど瓶に詰め終えた、鬼灯が注文していた薬を乱暴に手に取った。
「ほら、さっさと帰れよ!」
「・・・・・・喧嘩するほど仲がいい?みたいな」
「俺も初めはそう思ったんですよ。でも、どうだろ?」
鬼灯と白澤のドタバタの最中、ミヤコと桃太郎は額をつき合せてヒソヒソしていた。
「親戚みたいに顔も似てるし」
「会うたびに何かと言葉は交わすし」
「やっぱり実は仲良しなん・・・・・・」
ドカンッという音と共に、床が割れた。
ミヤコと桃太郎は同時に顔を真っ青にして問題の方を恐る恐る確認する。
「あなたたちも、わたしの職業病を体験しますか?」
鬼灯がギロリと二人を見下ろし、ジワリと低い声で言う。地面には金棒が突き刺さり、砕けた破片が散らばっていた。
そうだ、鬼灯さんは白澤様に似ていると言うとダメなんだった。
桃太郎は思い出したが、時すでに遅し。
「この男に似ているなんて、屈辱ですよ」
「僕だってそうだね!誰がお前なんかと」
「いつもこんな感じなん?」
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