麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
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日の出は東から、全ての大地を照らして昇りくる。
城壁の上から目を細めて見ていた秋斗はほうとため息をついた。
遥か遠く、地平も山々も越え、海を越えた後に……自分の暮らしていた土地の昔の姿があるのだと想いを馳せて。
そういえばと思い出すのは古き偉人の話。
「日出る国の天子と日没する国の天子とかなんとか。日の出も日没もどっちも綺麗だからそれでいいけどなぁ。まあどの王だって自分の国が沈むような事を言われたら怒るか」
言葉の言い回しってのはめんどくさくて難しいモノだ、と零してから大きく伸びをした。
白蓮が逃げて来てから幾日。彼は桃香がいない間、その仕事のほとんどを行っていた。
白蓮の政務能力は高いのだが、さすがに直ぐ手伝ってもらうと城の文官達にも申し訳ないので断っていた。しかしすることが無いと愚痴を零していたので馬の状態を整えるように言い渡し、今は白馬義従を平地で調練をさせている。
雛里は朱里の代わり、月と詠は侍女仕事にと忙しく過ごし、ここ数日は一緒に昼食を食べる程度。
あの慟哭の夜の次の日、雛里と詠は彼に声を掛けたのだが、自然な姿で対応する秋斗にほっと息を付いていた。
そんなこんなで少し忙しいながらも戦の無い日々を満喫している彼らであった。
朝日の眩しい日差しを浴びながら彼は歩く。行く先々で、早朝だというのに起き出している人々に挨拶を交わしながら。
城まで辿り着き警備の兵に声を掛けてから、廊下を抜けて桃香が使っていた執務室に向かうと、既に早起きの文官が運んできてくれた書簡は積まれていた。
これだけすれば終わればいいな、なんて考えながら筆を取って幾刻。バタバタと掛ける足音が聴こえて眉を顰めた。
勢いよく扉が開かれて入ってきたのは一人の斥候であった。髪は乱れ、息も絶え絶え、蒼褪めた顔からはどれだけ重大な事態かが見て取れた。
「どうした?」
「それが……袁紹軍が……徐州に向けて行軍を開始しました!」
彼の思考は真っ白になった。後に、ガラガラと積み上げてきたモノが崩れる音が聞こえた気がした。
それは本当か、などと聞くはずも無く、彼はそのまましばらく動けずにいた。
「見てきた時は青洲に差し掛かったあたりでした、その数は五万近いと思われます。主だった将は文醜と張コウ、郭図に田豊の旗も……じょ、徐晃様?」
続けて説明を行うも、秋斗が何も言わない事を不振に思った斥候に呼びかけられて漸く、彼の頭は回り出した。
「……そうか。他に大きな情報はあるか?」
「いえ、敵将の旗と数だけしか、今の所は……」
「分かった。ご苦労だったな。お前さんはゆっくり休んでくれ」
一つ言って斥候が下がるのを待ち、彼は椅子から立ち上がり足早に執務室から出て行った。途中で入り口に構える兵に雛里と白蓮
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