暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
麒麟と鳳凰、仁君と伏竜
[3/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
急を要する事だから桃香達には指示を仰ぐ伝令を送ったぞ」

 秋斗からその情報を聞いて、白蓮は顔を苦悶に歪める。
 ことさら憎悪が深くにじみ出ており、今にもここから飛び出して戦に向かおうかという程であった。俯き、ぎゅっと唇を噛みしめて耐えようとしたが、あまりに強く噛み過ぎてすっと血が一筋顎に伝う。
 その様相を見て、秋斗はすっと目を細めて白蓮を見つめた。

――どれだけ白蓮を苦しめやがる。せっかく安定し始めていたというのに……これじゃあ早い段階で戦に向かわせる事も出来ないか。

 対して雛里は一瞬驚いた後に静かに目を瞑って黒羽扇をきゅっと握りしめた。現状把握と自軍の行うべき行動、如何にして秋斗の考える展開まで行き着かせるか、彼女の頭の中では目まぐるしい速さで計算が行われていた。

「とりあえず桃香達からの指示があるまで防衛の準備をと思うんだが――」
「私も戦わせてくれるんだよな?」

 秋斗の言葉を遮って凛とした声が室内に響き、二人の視線が白蓮へと向かう。瞳に燃える深く昏い憎悪の炎を見て、秋斗はため息を一つついた。

「ダメだ。袁紹軍との戦で、本城の防衛役は俺だけでいい」
「……なんでだよ」

 秋斗の返答が意外だったのか、白蓮は眉を顰めて、感情を抑えながら見据える。秋斗はゆっくりと大きな手を身体の前に開き、直ぐに三本の指だけを残した。

「一つ、憎しみは力になるが思考を縛って視野を狭める。
 一つ、お前の部隊は騎馬隊だから防衛に向かないし、こんな所で少しでも失うのは勿体ない。
 一つ、本城にいる兵はお前のも合わせて一万に満たず、物資も少なく、準備期間も足りないので五倍以上の相手には敗北必至。ただの時間稼ぎ程度の意味合いしかないからお前が居た所で焼け石に水」

 指を一つ一つ折りながら淡々と事実を述べられて、白蓮は苦い顔で俯いた。雛里はその心の内を予想して少しの哀しみを瞳に乗せ、秋斗に視線を向ける。

――雛里ならば、俺と同じ事を考えてくれているだろう。

 信頼の籠った微笑みを返した秋斗は話してごらんというようにコクリと頷いた。

「白蓮さん、何も問題はありません。秋斗さんだけがここで防衛を行う事はほぼ無いですよ」
「へ?」

 間の抜けた声。秋斗と雛里を交互に見て、白蓮の疑問だらけの頭では考え付く事も無く、どういう事だと二人に答えを求めた。

「私達劉備軍の取る事の出来る選択肢は幾つかありますが、大きな三つを話します。
 一つは秋斗さんを囮として袁紹軍を本城に引き寄せ、劉備軍本隊との挟撃で無理やりにでも大打撃を与えて迅速に撤退させてから、袁術軍と孫策軍に対して徹底抗戦。その後、ある程度で降る、もしくは逃げる事になるでしょう。袁家に降る場合は大徳に対する期待が地に堕ちてしまい再起はほぼ不
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ