第一部 学園都市篇
序章 シャングリ・ラの少年
七月十六日:『青天の霹靂』
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仁王立ちし、残心も示さず。ゴミを潰したほどの感慨もなく、男の懐から転がりでた新品の煙草を蹴り上げて手中に納める。
包装を破り、その内より一本を銜える。しかし、ライターが無い。
「異能力者の確率使い――――『制空権域』対馬?嚆矢だ……って、聞こえてやしねェか」
煙草を銜えたまま、足下から目を離す。蜂蜜色の妖しい瞳が、残る二人を捉える。
それは、一瞬の事。残る二人は、呆気に取られた顔で顔を見合わせて。
「ヘ、ヘヘ……何かと思えば異能力者だと? ビビって損したぜ……おい、燎多!」
「おう、任せとけ……テメェはさっさと金を運び込め!」
と、急に落ち着きを取り戻す。そして、リーダー格らしき雲丹頭が嚆矢の前に出た。
「へっ、バカな奴だ……エンカウンターだかなんだか知らねぇが、わざわざ自分から異能力をバラすなんてな」
「…………」
そして――――その右手に、紅蓮の焔を纏う。
その規模たるや、最早火球というよりは炎塊だ。
「この、強能力者の発火能力丘原 燎多に、勝てる気かよぉ?」
勝ち誇るように、その焔を翳す雲丹頭。成る程、先程シャッターを吹き飛ばしたのも彼なのだろう。そこには、己の能力に対する優越があった。
嚆矢は、そんな雲丹頭を見詰め――――
「――――気ィ効くじゃねェか、ド三品。丁度火ィ探してたンだ、ありがとうよ」
「は――――?」
その右手首を握り締め、銜えたままの煙草を焔に近付けて着火する。
そして嚆矢は焼け付く香気を味わいながら、煙を強盗の顔に吹き掛けた。
「――――氷」
更に、空いた右手で触れたお守りの紋様は『黒い縦一本線』。またも生まれた不快感を、そっくり目前の相手への怒りに摩り替えて。
――此より、我が属性は氷。その冷厳さは焔を掻き消す、原初の息吹!
「な――――俺の、焔を……!?」
自慢の焔を消され、あからさまに動転する発火能力者。怪物でも見るような目で此方を見るや否や――――
「ちっ……ちくしょぉぉっ!」
左手に灯した焔を、パンチと一緒に繰り出し――――嚆矢は、握り締めている発火能力者の右手に理合を見出だす!
「――――お待ちなさい!」
「「――――ッ!?」」
そこに響いた少女の声。ピンク掛かったツインテールの、常磐台の制服の娘。
少女は、嚆矢と発火能力者に向けて……肩に取り付けられた、『盾』の模様が描かれた緑の腕章を示す。
「風紀委員ですの――――器物破損、及び強盗の現行犯
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