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剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第五話 竜の羽衣
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んどを占領する、大きなくすんだ濃緑の塗装を施されていた“竜の羽衣”は鎮座している。
 “竜の羽衣”は、あまり掃除されていないのか、だいぶホコリが溜まっていることから。上部の方は、濃緑色ではなく、微かに灰色がかって見えた。
 士郎は、そんな“竜の羽衣”を疑問符が浮かんだ眼差しで見つめていた。
 
 そんな士郎の様子とは正反対に、キュルケとルイズは、気がなさそうに“竜の羽衣”を見つめていたが、タバサだけは、どこかに興味を惹かれたのかは分からないが、小さな体を利用して、“竜の羽衣”の周囲を観察している。
 
 シエスタは、士郎の常にない士郎の様子に不安になったのか、士郎の前に立つと、上目遣いで士郎を見上げ、心配気に話しかけてきた。

「シロウさん、どうしたんですか? わたし、何かしましたか?」
「シエスタ……君のひいおじいさんが残したものは他に何かないか?」

 士郎は心配気に見上げるシエスタに顔を合わせることなく、“竜の羽衣”を鋭い目付きで見上げたまま質問をすると、シエスタは顎に右手の人差し指を当て、小首を傾げた。

「そう、ですね。ひいおじいちゃんのものといえば、後はお墓か、遺品が少し家にあるだけなんですが」
「すまないシエスタ。もしよければ、それを見せてくれないか?」

 



 シエスタの曽祖父のお墓は、村の共同墓地の一画にあった。白い石でできた、幅広の墓石の中、一個だけ違う形のお墓があった。黒い石で作られたその墓石は、他の墓石と赴きを異にしていた。
 墓石には、墓碑銘が刻まれている。

「ひいおじいちゃんが、自分が死ぬ前に作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、何が書いてあるのか読めなくて。なんて書いてあるんでしょうね?」

 シエスタが墓の前に膝を曲げて眉根を寄せ、困惑気に墓碑銘を見て呟くと、士郎は一瞬息を飲み、隣にいたシエスタでも微かにしか聞こえないほどの小さな声でそれを読み上げた。

「っ……海軍少尉佐々木武雄。異界二眠ル……佐々木武雄だと」
「えっ?」

 小さな声だったが、確かに墓碑銘を読み上げたと思われる士郎に驚き、慌てて膝を伸ばし立ち上がったシエスタは、士郎に詰め寄っていく。

「し、シロウさんっ! 読めるんですか!? この……墓碑め、いが?」
「………」

 士郎に詰め寄って問いただそうとしたシエスタだが、士郎の強い視線に気付くと、その声は段々と尻すぼみに消えていった。
 戸惑った様子で士郎を見上げ立ち竦むシエスタを見下ろす士郎は、これまでに何度かシエスタに感じた懐かしさの正体に気付き、自然と笑みが浮かぶ。

 そう、か……どうしてシエスタに懐かしさを感じていたのかやっと分かったが……しかし佐々木武雄か……まさか、あいつの行方不明のじいさんがこんなとこ
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