あの時の自分の姿
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【伊織魔殺商会】は、特殊な魔術結社である。
カンピオーネが四人在籍しているというのも勿論あるが、それだけではない。元々、鈴蘭が未だ『聖女候補』や『魔王候補』などと呼ばれていた時代から、既に特殊すぎる結社であった。
そもそも、純粋に魔術結社なのかどうかすらも曖昧だったし、構成員は戦隊物の敵役ABCみたいな全身タイツ。本拠地の地下には、一体何層あるのか判別もつかないほど広大なダンジョンが広がり、その中にはスライムやらゴーレムやら、挙句の果てにはドラゴンという伝説の存在までいたのだ。
麻薬密売組織などの取引現場に押し入っては物品や金品を強奪し、その当時、世界でも最大規模の魔術結社である【神殿教会】とは敵対していた。
しかも、総理大臣に直接電話をかけて、警察に圧力をかけさせることすら可能という、色々な意味で規格外な結社だったのである。
さて、今となっては、【伊織魔殺商会】の実質的なトップは鈴蘭だが、当時のトップは伊織であった。彼もまた鈴蘭と同じように自由奔放なタイプで、常識などを全く気にしない人間である。
どのくらい非常識かと言えば、教育委員会や学校に圧力をかけて、学生だった鈴蘭のクラスに、担任として潜り込むほど。
あの時の鈴蘭は、今ほど自由な性格をしていない。良くも悪くも『常識的』であり、伊織の訳のわからない行動に、いつも悲鳴を上げていたほどだ。
(懐かしいなー・・・)
鈴蘭は、その時の光景を思い出していた。あの時は私も、こんな叫び声を上げていたものだ、と頷いて。
・・・さて、一体何故彼女がこの話を思い出して懐かしんでいるのかといえば―――
「な、なんでアンタがいるんだよ!?」
「やられたわ・・・。私の転入のインパクトを、完全に持って行かれた・・・!流石は【聖魔王】様ね。やることなすことが常識外だわ・・・!」
彼女の目の前に、あの時の自分と同じような叫び声を上げている二人がいるからである。
「じゃあ、改めて自己紹介を!・・・この度、転入生としてこのクラスにやってきました、名古屋河鈴蘭です!皆、よろしくねー!!!」
『よろしくー!!!』
あの時の高瀬は、教師として学校に潜り込んだ。同じことをやっても詰まらない。・・・なら、自分は生徒としてもう一度高校生をやり直そう!!!
そう思って、草薙護堂、エリカ・ブランデッリと同じクラスに権力を使って押し入った鈴蘭は、内心でほくそ笑んだ。
(・・・どうよ?私だって、まだまだ高校生でも通じるでしょ?)
草薙護堂の受難は、まだまだ終わりそうにはない。
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