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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十九 水面下
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ルを見つめた。ナルはその目を強く見返した。互いの視線が一つに溶け合う。


やがてナルトはふっと笑みを浮かべた。そして一言、「そうか」と返す。
(お前の居場所は木ノ葉なのか―――)




「君は強いね」
「……き、急になんだってばよ」
詰問していた時とは打って変わって優しげに微笑む。その態度の変わり様に、当初うろたえたナルだが、彼の柔和な面立ちに安らいだのか、落ち着きを取り戻した。そして若干のからかいを含んだ物言いで、「そっちのが断然強いじゃんか」と不平を零す。
「あのゲジマユを倒したんだってばよ?すごいってば!」
「強くなんてないよ」
ナルの言葉を即座に否定し、ナルトは顔を逸らした。その瞳は遙か彼方を見ている。
「本当の強さというのは、大切な何かを守ろうとする、その一瞬だけ発揮されるものなのだから」
思わず零れたその独り言に反応するナル。思い出したように「そういえば、白の兄ちゃんもそんな事言ってたってばよ…」と呟く。

ナルの呟きに内心苦笑したナルトは、改めて姿勢を正した。
当初の目的である真意は聞けた。木ノ葉の里を憎んでいないと彼女がそう言うならば、自分のとる行動は―――。


ナルトは不意に手をナルの双眸に翳した。両眼を覆われた彼女は戸惑って身を強張らせる。だが次第に目の前の光景が陽炎となってゆらゆら揺れ始めた。ゆっくり下りてくる瞼。

ナルトはナルの双眸から手を放し、彼女の様子を窺った。完全に寝入っている。次いで会う直前に張っておいた結界に綻びがないか確認すると、彼は視線をナルのお腹に注いだ。
「突然すまない。話がしたいんだ」
囁く。彼の声に呼応するかの如く、ナルのお腹に施された紋様が服を透かして浮かび上がった。ぼんやりとした赤い光が脈を打つように波動する。




「―――――九喇嘛」
その声にはまるで、懐かしい旧友に会えたかのような響きがあった。

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