第五十話 思春期C
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。負けず嫌いな性格だが、喧嘩になりそうだったら、彼はすぐに身を引くところがある。今回は喧嘩ではないとはいえ、戦闘だ。痛いのは嫌だと公言しているアルヴィンが、前向きに戦闘準備をしていることに疑問を持った。
アリシアがいるからだろうか。彼女が参加できないことに、アルヴィンはどこか決意をしたように見えた。いつものようにかっこいいところを見せたい、という理由なのかもしれないが。少なくとも、モチベーションという点では、アルヴィンと自身の心境は違うのだろう。ティオールは不可解そうに、眉をひそめた。
「よし、善は急げだ。アリシア、少年B、家にカバンを置いて行ってくるから、先に帰るな」
「はーい。お母さんには私が言っておくよ」
「サンキュー。ついでにアリシアのカバンも、一緒に持って帰ってやるよ」
アルヴィンが差し出した手に、アリシアは「ありがとー」とカバンを手渡す。11歳になっても、相変わらず兄妹仲はいいらしい。その様子にティオールは思わずふっ、と笑みを浮かべた。
忙しないアルヴィンに少し呆れながら、アリシアとティオールは、転移で帰っていった少年を見送った。2人だけになった帰路。アルヴィンは無限書庫の仕事に出かけることが時々あったため、2人だけで学校から家に帰ることはそう珍しいことではなかった。
それでも、少し気分が落ち込んでいたティオールにとって、今日は気まずさが感じられた。良くも悪くも、アルヴィンは台風のように引っ掻き回してくるので、その対処の所為で余計なことを考えなくていいのだ。無言で住宅地を2人で歩いていたが、ティオールは会話で気まずさを打開しようと考えた。
「アリシアはさ」
「ん?」
「その……ア、アルヴィンがあんなにやる気いっぱいな理由を知っていたりする?」
打開策に必要な、会話のタネが見つからなかった。心の中で悶えまくった。
「お兄ちゃんが…」
「いや、ごめんね。ちょっと気になっただけで、深い意味は―――」
途中まで言葉を続けて、ティオールは口を閉じた。横を歩くアリシアの顔が、目に映ったからだ。どこか寂しげに、でも誇らしげに、愛おしげに。様々な感情が浮かぶ、そんな微笑みを見せていたから。初めて見る友人のそんな表情に、呆然とティオールは見つめていた。ただ、見惚れていた。
「お兄ちゃんは、お兄ちゃんとして頑張っているから、かな」
「えっ?」
「ティオ君もティオ君として頑張っているでしょ? それときっとおんなじだよ」
アルヴィンはアルヴィン。ティオールはティオール。当たり前のような、でも忘れてしまいそうな言葉。なんとなくわかるが、やはり意味がよくわからないのが正直な感想だった。そんな彼女の言葉に、ティオールはさらに会話を続けた。今の自分の中にある、鬱々としたこの感情の答
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