第五十話 思春期C
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は、今のティオールの心とほとんど同じものだった。彼の心情を読み取って言い当てた、というには彼女の口から紡がれる声には奮えがあった。おんなじだったんだね、と言ったアリシアの言葉が、もう一度ティオールの中を廻った。
秋風が2人の間を吹き抜け、沈黙が流れる。赤みを帯びた髪と金糸が風にはためくが、2人の目はお互いに外れることがなかった。どれぐらい経ったか、スッとアリシアは視線を外すと、ふわっといつも通りの笑顔を浮かべた。それに、無意識に肩に力が入っていたティオールの緊張も解ける。
「アリ、シア…?」
「うーん、そうだねー。どうしたらいいのかな。むぅー?」
口元に手を当て、小首をかしげながら悩む少女。への字に下げられた眉。それらの仕草が、ちんまりとした彼女を更に幼く見せた。さっきまでの印象ががらりと変わったことに、戸惑いを隠せない。それでも、先ほどまでの彼女も間違いなく彼女なのだ。それをティオールは、静かに受け止めていた。
「あっ、そうだ」
「ん?」
「ティオ君って、私とお兄ちゃんが大ゲンカをしちゃったことって知ってる?」
「……はぇ」
変な声が出たことには気づいたが、ぽかん、と口をあけて放心してしまった。大ゲンカ? アルヴィンとアリシアが? 先ほどまでの2人の様子が頭の中にリフレインされては、アリシアが発した言葉の意味をなかなかティオールは理解できなかった。
「え、えっ……いつ」
「確か、私たちが3年生になってぐらいかな? あの時は、ちょっと家出までしてしまいまして」
いやー、と恥ずかしそうに笑うアリシア。ティオールとしては、正直もういっぱいいっぱいだった。何からツッコめばいいのかがわからない。自分のこと。アリシアのこと。喧嘩のこと。布団以外に喧嘩理由があったこと。いや、そもそも布団で喧嘩もおかしい。等々。
「よーし、ティオ君! 迷える子羊さんに、アリシアお姉さんがどーんと教えちゃうよ!」
「え、誕生日は僕の方が早いはずだけど」
「こまけぇこたぁいいんだよ!!」
「よくないよ!? お姉さん発言じゃなくて言葉遣いが!?」
「むぅー? お兄ちゃんから伝授されて、頑張って練習したのに」
「……アルヴィーーン!!」
アルヴィン・テスタロッサ。彼女の兄の業の深さを思い知った。
「ほらっ、早く早く! 今日はリニスとウィンは見回りだし、コーラルとブーフもお出かけしているはずだから、家には誰もいないと思うよ」
「そ、それはそれでまずいんじゃ。一応男女だしさ」
「んー、小学生だからきっとセーフだよ。こういう特権は使える時にフル活用するべし! あっ、ここテストに出るって言ってたよ」
「それ言ったの絶対にアルヴィンだろ!」
いたずらっ子のような笑顔を見せ、走り出したアリシアに、
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