第五十話 思春期C
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えをアリシアが知っているような気がして。
「僕が頑張っているってさ。でも、何を? 僕は先輩たちやクイントやメガーヌ、それこそアルヴィンやリトスと比べたって……才能や特別な力なんて何も持っていない。家の期待にだって応えられていない。僕だけ、みんなと違って将来を何も決められていない」
ティオールの家は、それなりの魔導師を輩出する家系だった。その成果が認められ、富豪となった実力派。さすがに『雷帝』と呼ばれるダールグリュン家のような大物の富豪と血筋を持つ家とは比べられないが、中堅であり、十分に裕福であった。
前当主の孫の子どもの内の1人。分家という立ち位置であり、本家に行くのは年に1回あるかないかぐらい稀だ。ティオール自身は、少しお金持ちなだけの庶民である。それを本人は特に苦に思ったことはなく、自分が貴族だという認識もない。それでも、家系として受け継がれた魔導師としての技術はあった。
幼い頃から、父親に家の魔法を教えられた。ベルカ式の術式が含まれた技術を。だがティオール自身は、ベルカ式より、ミッド式の方に適正があった。魔力量も決して多くはなかったのだ。父と母から自身の魔力資質について、何かを言われたことはない。2人とも十分な愛情を注いでくれたのだから。
それでも、どこかで恐れていた。自分に何ができるのだろうか。優しい両親に何を返してあげられるのだろうか、と。自分よりも才能がある親戚の者たちを見てきたから、その焦燥は成長するにつれて大きくなっていった。
「アレックスは宇宙に行って、色々な生態系を見たいって言っていた。ランディやリトス、クイントやメガーヌは管理局に入るかもしれない。メリニスは母親の実家の方の家業を受け継ぐって言って、ずっと頑張っている。アルヴィンは司書になって、冒険家を目指している」
「…………」
「アリシアの夢は聞いたことがないからわからないけど、前にどんなことをしたいのかは聞いた。僕には、何がやりたいのか、何ができるのかすらわからないんだ」
気づけば、ずっと胸の奥にしまい続けていたものを吐き出してしまっていた。止められなかった吐露に、自己嫌悪が彼の胸に広がる。これではただの八つ当たりだ、と巻き込んでしまった友人に申し訳なさが溢れた。
家のことや自身の力なんて、個人的なものだとわかっている。それでも、自分がほしいものを持っていて、やりたいことを決められている友人たちが羨ましかった。そして、そんな気持ちを持っている自分が嫌だった。
「……そっか。ティオ君は、私ともおんなじだったんだね」
「えっ…?」
「自分ではどうしようもなくて、羨ましくて、悔しくて、……大好きな人たちに置いて行かれるかもしれないことが、すごく怖くて、ただ震えることしかできなかった」
アリシアの言葉
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