第三章
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「やれやれ、思いきりな」
「思いきりですか」
「やっていいんですか」
「遠慮はいらないからな」
私達にこうまで言ってくれた。
「どんどんやれよ、場所はな」
「はい、場所は」
「そこは」
「第一体育館は卒業式で使うからな」
だからそこは使えないというのだ。けれど私達の高校は有り難いことに体育館は一つじゃなかった、二つあったので。
「第二体育館な」
「あそこをですか」
「使っていいんですね」
「ああ、使え」
まさにそこを、というのだ。
「許可は俺が出しておくからな」
「すいません、何か」
「色々やってくれて」
「いいんだよ、卒業式ってのは泣く場所じゃないんだよ」
先生はざっくばらんな調子で私達に言ってくれた。
「笑う場所なんだよ」
「卒業式はですか」
「笑う場所ですか」
「確かに卒業したら皆それぞれの場所に行くさ」
学校からだ、大学に進学するなり就職するなりして。
「それでもな」
「それでもですか」
「お別れでも」
「一生のじゃないんだよ」
ここでだ、先生はこう私達に言った。
「むしろな」
「むしろ?」
「むしろっていいますと」
「また会う時を楽しみにする時を作るな」
笑顔のまま私達に言ってくれた。
「そうした時なんだよ」
「一生のお別れじゃなくて」
「一時ですか」
「また会うことを楽しみにする」
「そうした時を作る時なんですか」
「それが卒業式ですか」
「そうだよ、だから寂しい思いなんてする必要ないんだよ」
先生は私達に言ってくれる。
「また会おうって笑顔で言い合う日なんだよ」
「だからですか」
「私達も」
「ああ、派手にやれよ」
そのライブを、というのだ。
「いいな」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
私達も先生のその言葉に笑顔で頷いた、そしてだった。
場所の話のことも済んで本格的なライブの演奏の準備に入った。とにかく最後は派手に賑やかにしようということになった。
それでだ、その中で。
ライブの時の衣装についても話した、そちらはというと。
「制服でいいでしょ」
「そうよね、卒業だし」
「学校でやるんだし」
「それに制服でのライブもいい感じだし」
「それじゃあね」
「別にいいわよね」
「制服でね」
このことはあっさりと決まった。
「制服で演奏しても」
「別におかしくないし」
「むしろもう制服着るのはこれが最後だから」
「それじゃあね」
「制服着てね」
「それでやろう」
こう話してだ、制服でライブをすることになった。その話もしてだった。
演奏の練習もした、けれどこれは。
どうにもだった、殆どのメンバーがだった。
楽器を持つこともはじめてだった、それでどうにも。
「ちょっとねえ」
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