第三章
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「それでもなのね」
「そうだよ、ロシアのケーキでいいよ」
硬いケーキだ、ロシア以外の感覚で言うとケーキというよりもクッキーやそういったものと言った方がいいかも知れない。
「あれと紅茶でね」
「ロシアそのままでいいのね」
「質素な感じでね」
ケーキもそうだった。
「それでいいんだよ」
「何でもそうだけれど」
娘は少し呆れながら母に言った。
「お母さんってそれでいいのね」
「満足してるよ」
実際にそうだというのだ。
「全然困ってないよ。今はテレビだってね」
「面白い番組があるっていうのね」
「爆発しなくなったからね」
面白くなったからではなくそれでいいというのだ。
「いいじゃない」
「いや、普通はね」
娘は今の常識から話す、今のソビエトのだ。
「テレビも爆発しないでしょ」
「ソ連時代はたまに爆発してたよ」
それで死んだ人もいる、ソビエト時代は品質管理という考えがなかったのでその結果そうした事態になってちたのだ。
「今はテレビだけでなくてね」
「他のものもっていうのね」
「よくなったからね」
品質がだというのだ。
「いいじゃないか」
「何かね、お母さんって些細なことで満足するから」
「いいことだよね」
「いいことだけれどね」
それでもだと言うのだ。
「張り合いがない感じよ」
「それで幸せならいいじゃない」
「そういうものなのね」
「私はそう思うよ」
お婆さんは安楽椅子に座ったままにこにことして娘に話す、そこにあるものは何の不平不満もなく心から幸せそうである。
お婆さんは夏でも冬でも変わらない、変わるのは季節だけだ。
夏は暖炉に火が入らない、冬には入る。それだけで。
服はん冬は厚くなる、だがその服も古いもので。
孫達もだ、怪訝な顔で言うのだった。
「お祖母ちゃんそんな古い服でいいの?」
「もう何年も着てるんだよね」
「二十年になるかね」
これがお婆さんの返答だった、今も暖炉の傍で安楽椅子に座ってそのうえでにこにことして孫達に応えている。
「今の服は」
「二十年って」
「僕達fが生まれるずっと前じゃない」
「そういえばそうだね」
言われて気付いた位だった。
「思えばね」
「服ってそんなに長く着られるの?」
「僕達一年か二年だよ」
「すぐに身体が大きくなって着られないのに」
「お祖母ちゃんはそんなに長く着られるの」
「歳を取ると身体が大きくなることが止まるんだよ」
成長が終わることをだ、こう言ったのである。
「それで後はね」
「身体に合った服をずっとなんだ」
「着られるんだ」
「そうなんだよ、大事に着ていればね」
それでだというのだ。
「二十年も着られるんだよ」
「厚いだけのかなりださい服だけれど?」
「それ
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