暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/magic girl−錬鉄の弓兵と魔法少女−
無印編
第三十四話 黄金の輝きと代償   ★
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
side リンディ

 ただ砂嵐が映し出されるモニター
 砂嵐のノイズが響き渡るブリッジ

 その光景にそこにいる全員が固まっていた。

 まだ時の庭園が完全に崩壊したわけではない。
 だけど天井という大質量の物が降り注いだという事実は変わりようがない。

 士郎君が持っていたのは黄金の盾だけ
 プレシア女史も吐血し、まともに魔法を使う事すら敵わない

 そんな状況で助かる見込みなんてないに等しい。

 頭には『死』という絶望的な言葉しか思いつかない。

 士郎君だけなら逃げられたはずだ。

 そうプレシア女史を見殺しにすれば士郎君の身体能力なら逃げられたのだ。
 だけど士郎君は見殺しにしなかった。
 いえ、正しくは自分を見殺しに助けようとした。
 「一番最初に俺を切り捨ててください」
 私が彼に初めて恐怖を覚えた時の言葉の通り、彼は自分自身を切り捨てたのだ。
 誰かのために自分の命を簡単に切り捨てる事の出来る思考。

 物語や言葉にすれば素晴らしい英雄譚なのだろう。
 自分を省みず誰かを助ける正義の味方。

 でも現実に実行できる人間がいるとするなら、それは致命的に何かが壊れている。
 普通の人間は自分と他人の命を天秤にかけた時、普通は自分の命が重くなる。
 士郎君にはそれが欠落している。

 その最終的な結果がこれなのかもしれない。

 誰かのために命を投げ出し、死ぬという……違う!

 違う!

 私はまだ確かめていない。
 魔導師の常識なら絶望的な状況。
 だけど士郎君は魔術師。

 まだ可能性は『0』じゃない。
 確かめれば最後の希望も消えてしまうのかもしれない。
 それでも

「エイミィ! まだ使えるサーチャーを全て最下層に送って!」
「っ! はいっ!!」

 私は確かめないといけない。
 それが私の役目だ。

「使用可能サーチャー最下層に送りました。
 映像来ます!」

 映し出された最下層の映像。

 半ば崩壊しかけていた最下層は瓦礫の山となっていた。
 その中で輝くジュエルシード
 それともう一つの黄金の光

「ジュエルシードと魔力反応!
 士郎君とプレシア女史です!」

 エイミィの言葉が聞こえる。
 だけど返事をする事も忘れていた。

 『0』に近い可能性。
 だけど士郎君はそのわずかの可能性を掴み取っていた。

 そこにいたのはプレシア女史を右腕に抱え、左手に持つ盾の光で瓦礫を防ぎきった士郎君。
 黄金の輝きはゆっくりと収まる。

「エイミィ! 士郎君のところにモニターを」
「はい」
「士郎君、怪我は?」

 エイミィに士郎君のところにモニターを表示させ、安否を確かめる。


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ