第五章
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「もう婆さんに用はないわ」
「だからじゃな」
「ここに来ることもないわ」
「だから二度と会わぬと」
「そういうことやな」
ハラロスは笑って老婆に言う。
「ほなこれでさよならやな」
「さらばじゃ」
お互いに一生の別れの言葉を交えさせた、だがその含んでいるものは全く違っていた。ハラロスは気付いていないが。
ハラロスはこの日も悪どい仕事をして夜は遊んだ、そしてその遊んだ帰りに。
夜道を身体をゆすって歩いてた、一人で。
そのうえで家に帰ろうとしていたがここであの鳴き声が聞こえてきた。
「チョン、チョン」
「ああ、また出て来たんやな」
チョンチョンの鳴き声だ、ハラロス鳴き声を聞いてこう思った。
「今は魔法陣もないし。どうでもええわ」
しかも姿も見た、」ハラロスの興味の外だった。
だがチョンチョンの方は違っていた、しかも。
声が増えてきた、これまでの様に一つではなく。
二つ、そして三つと増えていった。そのうえで。
ハラロスの周りを覆ってきていた、声は無数のものになっていた。
「チョン、チョン」
「チョン、チョン」
「チョン、チョン」
「チョン、チョン」
「何やねん」
声の多さにだ、ハラロスは眉を顰めさせて呟いた。
「鬱陶しいのう」
しかしすぐに鬱陶しいと言える状況ではなくなった、彼の目の前に。
無数のチョンチョンが出て来ていた、その数はというと。
無数に、何十匹ものチョンチョン達が姿を現していた。そのうえで彼の周りをおぞましいまでの怒りの表情で囲んでいた。
目は吊り上がり耳は口まで裂けている、歯は牙の様だ。
ハラロスはその無数の顔にはじめて、生まれてはじめて恐怖を感じた。身の危険を感じ取りそこのこともあって。
そして叫び声を挙げた、だが彼がどうなったのかは誰も見なかった。
数日の間彼は仕事に来なかった、何だかんだで仕事には出て来る男なので皆このことには不思議がった、そして。
警察から会社にハラロスが見付かったとの話が届いた、だがその話はというと。
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