第一章
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チョンチョン
キヨ=ハラロスはメキシコのアカプルコでタクシーの運転手をしている。一九〇近い大柄で筋肉質だ。あまり人相のよくない細長い顔に薄褐色の肌だ、黒髪を短く丸坊主に近い位に刈っていて服装はゴロツキのそれを思わせる。
タクシーの運転手だがその仕事ぶりはかなり酷い、気の弱そうな客からはボッタくり恐喝めいたこともしている。
それでだ、タクシーの運転手仲間からはこう言われていた。
「あんな奴が同業だとな」
「迷惑だよ」
「俺達までそう思われる」
「酒飲んで乗るのも普通だしな」
「運転も荒いし」
「女癖だって悪い」
「この前もお年寄りのお客さんから脅して金余計にふんだくってな」
そうした行いをだ、顔を顰めさせて話すのだった。
「とんでもない奴だよ」
「本当にな」
「早くいなくなればいいのにな」
「関わり合いにもなりたくない」
「アカプルコの運転手の筈だ」
「最悪な奴だ」
こう話すのだった、とにかくハラロスの評判は同業者の間では最悪だった。だが彼はそんなことは気にしなかった。
それでだ、この日もだった。
観光客からボッタくってだ、意気揚々と仕事を終えてバーで暴飲していた。その飲み方も海賊か山賊の様だ。
その彼にだ、カウンターから親父が言ってきた。
「あんた今日はどうだったんだ」
「儲けたわ」
誇らしげに答えるハラロスだった、その問いに。
「ほんまにな」
「そうかい、それはよかったな」
「俺が一番稼いでるやろな」
アカプルコのタクシーの運転手の中でだ。
「稼ぎ方がちゃうわ」
「あんまり悪いことするなよ」
「安心せえ、お巡りなんか怖ないわ」
「金掴ませてるのか」
「さあな」
そこは惚けた、だがその対応こそが真実を語っていた。
それで知らない振りをしながらだ、こうも言うハラロスだった。
「とにかく俺はこれで生きてるからや」
「いいっていうんだな」
「そや。これから娼館行こうか」
「病気には気をつけろよ」
「わかってるわ、ほな金置いとくからな」
親父もハラロスは好きではないが客は客だ、店の中で暴れないから入店は許していた。それで対応も大人なのだ。
それで勘定を受けて彼を送った、だが彼がいなくなるとハラロスを密かに嫌な目で見ていた店員の女の子にこう言った。
「安心していいさ」
「どうしてですか?」
「ああいう奴はいなくなるからな」
「誰かに刺されてですか」
「そうなるかな。本当にな」
文字通り、というのだ。
「いなくなるんだよ」
「殺されて埋められるとかですか」
「悪事ばっかりしている奴の前には落とし穴が開くもんだよ」
「落とし穴ですか」
「半分自分で掘ったのがな」
こう女の子に言うのだった。
「それが
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