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オリーブの祝福
第三章
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「貴女、アラブ系かしら」
「ええ、そうよ」
 その通りだとだ、相手も答える。
「パレスチナから来たわ」
「パレスチナ・・・・・・」
「シャハラザード=コサインというのよ」
 彼女は自分の名前も名乗った。
「去年からこの大学に留学しているわ」
「そうだったの、パレスチナなの」
 彼女の出身国を聞いてだ、カテローゼは困惑した顔になって言った。
「それはね」
「そういう貴女は」
「まず名前から名乗らせてもらうわ」
 暗い顔でだ、カテローゼは言った。
「カテローゼ=ワイズマンよ」
「ドイツ人かしら」
「ご先祖様の住んでいた国はね」
「住んでいた?」
「ヒトラーから逃げてきたのよ」
 この言葉でわかる、シャハラザードの顔もヒトラーからと聞いて瞬時に強張った。
「祖国にね」
「イスラエルなのね」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのだ。
「私はね」
「そうなのね」
「まさかね」
「ええ、ここで会うなんてね」
「思わなかったわね」
 こうシャハラザードに言うのだった。
「まさか」
「ええ、ただ」
「ただ?」
「私は貴女とは初対面よ」
 シャハラザードはカテローゼの向かいの席からこう彼女に返した。
「今はじめて合ったわ」
「それは私もよ」
「だから貴女は私の敵ではないわ」
「そうね、貴女も私の敵ではないわ」
「確かに、ね」
 このことは苦い顔で言うシャハラザードだった。
「私達の祖国はいがみ合ってきているけれど」
「私達はね」
「初対面よ。お互い武器も持っていないわ」
 このことも言うのだった。
「何一つとしてね」
「そうね、全くね」
「だからね」
 それでだというのだ。
「私達がここでいがみ合う理由はないと思うけれど」
「その通りね、私もそう思うわ」
「だからね」
「今ここではね」
「ニューヨークではね」
 もっと言えばアメリカだ、この国ではだ。
「普通に付き合っていくべきね」
「ええ、そう思うわ」
 二人でお互いに話す、そして。
 ここでだ、カテローゼはこうシャハラザードに言った。
「私達これからね」
「これから?」
「こうして会えばね」
 その時はというのだ。
「普通にお話したいけれどどうかしら」
「私もそう思うわ」
 シャハラザードもカテローゼのその言葉に応えてこう言うのだった。
「私達の間にはしがみがないし」
「それにここは中近東ではないから」
「こうしてね」
「普通に普通のことをお話していきましょう」
 こう二人で話してだ、これがはじまりとなってだった。
 カテローゼとシャハラザードは交流をはじめた、やがて会った時のお喋りから共に二人でいる様にもなった、共に図書館に行ったりニューヨークの街を歩いた、そしてだった。
 ニ
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