第三章
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「そんな一度自分が言ったかもわからない様なことを覚えているのはね」
「ただ記憶力がいいんじゃないわよね」
「それ以上よ」
それで済まないというのだ。
「もっとね」
「もっと?」
「確かな気持ちがあるからよ」
だからだというのだ。
「彼にね」
「まさかそれって」
「そう、あんたのことが好きなのよ」
だからだというのだ。
「それもかなりね」
「じゃあ彼ひょっとして私のことが」
「かなりね」
「本気なのね」
「そうよ、毎日下校時間一緒よね」
「ええ、そうよ」
私は愛菜の問いにこう答えた。
「登校の時もね」
「前の彼氏の時は違ったでしょ」
「時々だったわ」
登校の時も下校の時もだ、あの時は本当に時々だった。
「キスもしなかったし」
「でしょ?その時と比べたらね」
「今はなのね」
「そう、違うから」
それも全く、だというのだ。
「前の彼と」
「本気なのね、彼」
「だからそんなことまで覚えてるのよ」
私の誕生日や好きなものをだというのだ。
「一回聞いただけでね」
「人ってどうでもいいことは覚えないわよね」
「逆に言えば大切な人のことはね」
覚える、そうだというのだ。
「だからあんた今度は」
「そうなのね、彼本気で私のことを」
「好きなのよ、違うわよ」
「それじゃあ」
「どうするの?あんたは」
愛菜は私の顔を見て私に問うてきた。
「今度は」
「今度はって」
「だから、今度の付き合いはね」
「そう言われたら」
真剣に考える顔になってだ、私は彼に答えた。
「ちょっとね」
「考えていないの?」
「まさかそこまで想われるなんてね」
想像もしていなかった、このことも。
だからだった、私は愛菜にこう答えた。
「まだわからないわ」
「そうなのね」
「けれど前とは全然違うのはわかるわ」
あの素っ気ない、キスも何もないただ一緒にいるだけの普通の交際とは違うことはだった。そのことはわかった。
それでだった、私は愛菜に今度はこんなことを言った。
「だからね」
「前みたいにはしないのね」
「うん、少なくともね」
そのつもりだと言うのだった、そしてだった。
私は今は愛菜にこう答えた。
「前とは違うわ」
「深く付き合うのね」
「そうしていくから」
こう言った、それから実際に。
私も彼からその誕生日や好きなものを聞いてプレゼントをして登下校もずっと一緒にデートをした。休日も時間があれば一緒にいた。
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