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鬼灯の冷徹―地獄で内定いただきました。―
肆_犬猿の仲
一話
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 ミヤコが閻魔庁で働くようになって、実に一週間が経っていた。
人間の女が臨死体験中で現世に戻れるようになるまでここにいるらしい、という話はすぐに獄卒たちの間にも広まった。
だからといって、取り立てて問題はなかった。
何しろあの鬼神・鬼灯が雇ったとなれば、話は別である。
ミヤコは毎日てんてこ舞いだったが、着物を一人前に着こなせるようにはなった。

「あっ」

書斎で書類に判を押していた鬼灯が、突然声を上げた。
ミヤコはそのそばで巻物の整理に追われていたが、手を止める。

「どうかしたんですか?」

「いえ、ちょっと注文していた薬のことを思い出して」

鬼灯はそう言いながら、時計を確認する。

「薬?」

「桃源郷のある男に、いつも頼んでいるのです。同じ東洋医学を研究している者同士、そこはわずかに協力し合っています」

「ふーん」

「わたしとしたことが、うっかり約束の時間を過ぎてしまっていました。今から行かないと」

「それ、わたしも行っていいですか?」

桃源郷、と聞いて何だかおもしろそうだと単純に彼女は思った。
それに巻物の整理にもそろそろ飽きていた。
鬼灯は顎に手をやり、空を見る。

「まあ、いいでしょう」




桃源郷は、ミヤコがイメージしていた場所より遥かに美しいところだった。
色とりどりの花や木々が咲き乱れ、立派な建物があちらこちらに建っている。
かわいい白ウサギたちまでいる。

「ここは、日本と中国の境界にあたります」

「あっ、だからあの建物とか、何となく中国っぽいんですね!でも、今からどこへ行くんですか?薬を作っているようなところって」

「まあ、もうすぐ着きます」

鬼灯について行くと、一軒の家に着いた。
漢方薬のような匂いがする。そしてさらにウサギが多い。

「ごめんください」

鬼灯が引き戸を開ける。
中から柔らかい口調の男の声がした。

「あっ!鬼灯さん、いらっしゃい」

「桃太郎さん、今日も精が出ますね」

三角巾には桃のマーク、何というかずんぐりむっくりした体系のその男。
彼は鍋を掻き混ぜている最中だった。

「あれ?そちらの方は?」

「彼女は加瀬ミヤコさん。かくかくしかじかで、今は閻魔庁で働いてもらっています。ミヤコさん、彼は桃太郎さんです」

「こんにちは。かくかくしかじかで、鬼灯さんの元でお世話になっています」

しかし桃太郎って、あの桃太郎?
ミヤコは目をパチパチさせた。小さい頃によく読んでた絵本の絵と違うぞ。

「こら、あなた。今、失礼なこと考えてたでしょ」

鬼灯がそっと耳打ちする。

「あのー、聞こえてますよ?」

「あっれー?どうしたのその子!」

また
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