第四話
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何もしたくない。そう思い始めて溜息をついた瞬間、妹紅は急に体が温かい感覚に包まれた。
「……妹紅ちゃん」
「えっ……?」
急に聞こえてきたのは紛れもなくふみ江の声だった。まさかと思い妹紅は彼女の死体に目を向ける。しかし彼女はこっちを見ているどころか動いてすらいなかった。
「……幻聴か」
そう呟いてまた空を見上げる。しかし今のふみ江の声は幻ではなかったのだ。
「幻聴じゃないよ。妹紅ちゃん」
「へっ……!?」
空を見上げると同時に彼女の目に映ったのは、紛れもなくたったままこちらを見下ろす彼女の姿だった。妹紅は体を起こしすぐさま振り返る。彼女の顔はきちんと繋がっており傷口も見えない。どこからどう見てもふみ江自身だった。
「ふみ江……ふみ江!」
妹紅は立ちあがると彼女を抱きしめようとする。しかしのばした手は完全に彼女の体を突き抜けてしまい、妹紅自身もそのまま彼女の背後に立っていた。
「えっ……?」
「ごめんね妹紅ちゃん……気持ちは嬉しいけど、もうできないんだ」
そう言ったふみ江は苦笑いをしていた。
「どうして……!?」
辺りを見渡して見ると彼女の死体はまだ倒れたままだった。それに顔も取れていて動ける状態ではない。しかし目の前に彼女は立っている。となると答えは一つしかなかった。
「ごめんね……私幽霊になっちゃった」
そう言われた瞬間、妹紅の心に何かが突き刺さった。幽霊になったということは死んだということ。今までそれを認識しようとしなかった妹紅は、その一言で一気に現実に引き寄せられた。
「なんで……お前不老不死だろ? 死ぬわけないじゃんか……」
感情をぐちゃぐちゃにされた妹紅は笑いながら涙を流す。そんな彼女にふみ江はただ悲しそうな笑みを返すしかなかった。
「なあ嘘なんだろ? 頼むからそう言ってくれよ……な?」
「嘘じゃないよ妹紅ちゃん。私は死んじゃったの……」
再び妹紅の思考が途切れる。不老不死なのに死ねる? そんな事を自分に聞いて答えも分からず埋もれていった。
「なんでだよ……意味わかんねえよ!」
「私も分からないよ。こんな事になるなんて……思ってなかった」
そう言ったふみ江もついにうつむいたまま涙を目にため始めた。そんな彼女を見て、妹紅もなにも言えなくなってしまう。
それから数十秒ほど沈黙が続いた後、ふみ江がまた笑みを作り出して話しかけてきた。
「あのね妹紅ちゃん……私がこうやって出てきたのは、お礼を言いたかったからなんだ」
そう言われた妹紅はえっと言わんばかりに目を点にしていた。
「何言ってるんだよ……私は何もできなかった……お前を守ることさえ――」
「違うの。妹紅ちゃんが一緒に来いって言ってくれて……私は久々に人とふれあうことが出来た。忘れかけてた人との温もりを……思いださせてく
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