自称王と他称王
四話
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コロナの縋るような視線が辛い。手合せしてヴィヴィオを楽しませろという視線なのだから。
恨めしや、とアレクは投げっぱなしを決めた張本人を睨むが、アインハルトは先程から毛の穴まで調べる様にアレクを凝視している。
いっそ投げ出すか、と一瞬考えるが、ルームキーは未だティアナの手の中に有る。
(どないせえっちゅーねん!)
あーでもない、こーでもない、と考えていると、ヴィヴィオが自分の頬を叩いていた。気合を入れ直したらしい。
ただ、勝手に立ち直れるのならば、俺は何故此処に居るのだろう。アレクはそう思った。
「俺、いらなくね?」
「何言ってんだ、始めるぞ」
「……へーい」
どちらにせよ、やる事は変わらないらしい。
仕方ない、とアレクが構えを取ってすぐ、開始の合図が下された。
先に仕掛けたのは、ヴィヴィオ。半身で構えるアレクに牽制の左を出し、本命の右を繰り出す。アインハルトの時よりも強く、より鋭く。
だが、先程の事がまだ尾を引いているので少々力みがちな拳は読まれやすく、更に半身の相手には狙うヶ所も絞られるので、簡単に捌かれる。
もっと当てやすい所に。
胴を狙える位置に回り込もうとするが、片足を軸に回るアレクの方が圧倒的に早く、次いで迫る拳で防がれる。
ならば、リーチの差を埋め、掻い潜り、有利な立ち位置を。
軽快なステップとフェイントで懐に潜り込もうとするが、視界の殆んどが塞がれた。
同時に、腹部に手の感触。咄嗟に腹筋に力を込めると、凄い圧力が掛かった。
「陛下!」
オットーとディードに受け止められ、ヴィヴィオは何をされたか遅れて理解した。
掌打を目の前で止め、思考を止められた隙に腹部を打たれた。汚い手段ではあるが、ヴィヴィオには新鮮な衝撃だった。
(こんなやり方があるんだ……)
クイクイと手招きをするアレクに、身を震わせる。
知らない構えにまだ見ぬ戦い方。もっと知りたい、もっともっと戦いたい。
ヴィヴィオは漸く目の前の事しか見えなくなった……が、対するアレクは中々冷や汗ものだった。
(……泣かない、よね? 大丈夫……ですよね?)
アインハルトと同じ事をして、今度は途切れないと教えてやればいいんじゃないか、と浅はかな考えで実行したが、ヴィヴィオは顔を伏せて震わせている。
このまま泣いてしまったらどうしよう、超逃げたい、とアレクは思っていたが、そんな邪推はすぐに吹き飛ばされた。
「行きますっ!!」
「お、おう……!?」
自分の身もぶつけるかのような勢いで攻めてくる。ラッシュの中で放つ拳や蹴りも無駄な力みが抜け、その分しなやかに。
そして、無遠慮に成った。狙える所では一撃必倒を容赦無く繰り出すように成った。
少し引き腰気
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