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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十八 帰還
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不敵な笑みを浮かべる。無音殺人術(サイレントキリング)の使い手である再不斬に、「失言だったか」とナルトも笑みを返した。


里に戻るなり、【念華微笑の術】でナルトは再不斬に連絡をとっていた。不穏な動きは我愛羅ではなく、彼とザクの戦闘を観戦する者達にあったからだ。「まったく、人使いが荒い奴だぜ」と愚痴るものの、再不斬の表情は心なしか楽しそうである。


「目をつけられたのは木ノ葉の奴さ。砂の奴にズタボロにされてたぜ………かわいそうにな」
ちっともかわいそうになどと思ってもいない口振り。しっかり密会を盗み見た再不斬がそう告げる隣で、ナルトはじっと物思いに耽っていた。ふと目を細める。
「そいつは死んだのか?」
「運が良ければ、生きてるんじゃないか?もっともあの怪我で生きてたら奇跡だろうが」


雲が途切れ、月が再び顔を覗かせた。月明かりが影をつくる。はたと足下を見下ろしたナルトが怪訝そうに眉を顰めた。二つの濃い影と、薄い影。




「…後をつけられるとは、珍しいな」
「違いねえ」

どこからか自分達を密かに窺っている気配がする。なかなか上手い気配の絶ち方だ。どちらかと言うと再不斬の気配の絶ち方によく似ている。
自らの失態に臍を噛む再不斬。だがそれはナルトとて同じ事だった。気掛かりな点に心を奪われすぎて注意が散漫になっていた。表情を曇らせる。
もっともかなり遠い場所から感じるので、会話の内容までは聞こえないだろう。


「どっちの客だ?」
「さあな。どちらの客にせよ、迎え撃てばいい話だ」
先ほどとは一転し、顔を歪める再不斬。口角を僅かに上げる。
「――――殺(や)っといたほうがいいんじゃないか」
「今すぐにでも」と言う再不斬に、ナルトは静かにかぶりを振った。

「殺気は感じない。それに、再不斬の敵ではないだろう?」
ナルトの言葉に再不斬は一瞬目を瞬かせた。次第に顔を綻ばせ、にんまりと笑う。

「…当然だ」










宿まで突き止められぬよう【霧隠れの術】で身を隠す。夜に加え、深い霧まで出てきたら追跡は不可能だ。現に気配は感じない。濃密な霧に視界を覆われ、少年はすぐさま後を追うのを諦めた。思わず一言、言葉が零れる。
「さっすが……」
高い煙突の上から俯瞰していた彼は、にいっと口元を歪ませた。僅かに覗く犬歯が月光に照らされ、白く光る。
「再不斬先輩だ」
心底嬉しそうに少年は笑った。濃霧の中、彼の楽しげな笑い声が反響する。




その一部始終を知っているのは、相変わらず煌々と輝く月だけだった。

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