二十八 帰還
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で返すような、こんな奴……」
「そう言うな」
苦笑しながら指先で掴んでいる物をくるりと回す。キラリと鈍い光を放つソレは、ザクの義手に仕込まれていたもの。麻酔針である。
どうも予め埋められていたらしいその針の先端には、象をも痺れさす毒が塗られている。おそらく禁術の生贄にする直前に、麻酔で身体の自由を奪うつもりだったのだろう。そうとも知らずに大蛇丸様から頂いたのだと感謝するザク。自身の義手にそのような物が細工されているなどと考えもしない彼は、ある意味哀れである。
その針を抜き取り、別のモノを繋ぎ目として埋め込んでおく。その一連の作業をナルトはザクが気絶している際に手早く終わらせた。ザクがナルトから引っ手繰った義手は、既に針を抜いた状態だったのだ。知らぬは本人ばかりである。
「たくっ。里に着くなり、一人で行っちまうんだからな」
自身の感知能力でナルトの居場所を突き止めた香燐が恨めしげに言う。彼女に謝罪した後、ナルトは君麻呂の背後を窺った。
「……やけに大きい荷物だな」
「ナルト様を追い駆けるついでですよ。屋根の上で倒れていたんです」
今の今まで背負っていた男を君麻呂はようやく降ろした。香燐の先導でナルトを追う最中、拾った人間である。気を失っているらしいその人物をちらりと見て、ナルトは思わず息を呑んだ。
「どうしました?」
「いや…」
木ノ葉の額当てをしている男の顔は見知ったものだった。「確か、予選の試験官でしたね」と言う君麻呂の言葉を聞き流し、ナルトは香燐に「木ノ葉病院の場所、知ってるか?」と訊ねる。
「悪いけど彼を病院前に置いてきてくれ。それが済んだら、俺の居場所を感知して戻ってきてくれるか」
ナルトの言葉に承諾し、君麻呂から男を引き受ける。重そうに引き摺っていく香燐を見送った後、ナルトは君麻呂に向き合った。
「君麻呂はザクを連れて音に戻ってくれ」
「こいつを、ですか…」
いつもなら嬉々としてナルトに従う君麻呂が、この時ばかりは苦虫を噛み潰したような顔をした。渋々ザクを背負い、「いくら情けを掛けたところで、一文の得にもなりませんよ」と一言残して走り去る。
去り際の君麻呂の忠告に、ナルトは軽く肩を竦めた。いつものように読めない微笑を浮かべ、暫しその場で待つ。月が厚い雲の一群に覆われた。訪れる、完全な闇。
やがて彼は口を開いた。
「それでどうだった?」
「………――――ああ、」
暗がりからゆっくりと姿を現す。十日ぶりの声に、ナルトは薄く笑った。
「音と砂の密会だぜ。『木ノ葉崩し』決行計画書の引き渡しだ。あと、砂はギリギリまで表に出ないんだとよ。その負い目があるのか、目撃者は消していたがな」
「……お前は、気づかれなかっただろうな?」
「俺を誰だと思ってるんだ
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