二十八 帰還
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を必死にかわす。避けても避けても再び迫る砂にザクは歯軋りした。速攻で勝負をつけるつもりだったのに、一撃で仕留められなかったとは予想外だ。
闇を切り裂く。縦横無尽に闇夜を駆け抜ける砂。その応対に追われるザク。避け切れぬ攻撃は左手から放出する衝撃波で相殺する。
ふと顔を上げると、視界の端に我愛羅の姿が映った。悠然と鯱の頭の上でザクを見下ろしている。その態度がどことなく金髪少年と被って見え、彼の心が一瞬乱れた。
足を掬われる。砂の手に足首を掴まれ、勢いよく転倒。屋根上から投げ出される。
「くッ!」
左腕は砂の攻撃を相殺するのに使っている。左手で屋根の廂を掴み、落下を防ぐか。だがそうすれば砂の攻撃から身を守る術を失ってしまう。ならば落ちるか。
―――――右手を使えばいいだけだ。
ザクは生身ではない右腕を掲げた。人工物のそれは大蛇丸から直々に頂いた義手。実際に用意したのはカブトだが、彼はそのことを知らなかった。予選で右腕を失った自分を気遣ってくださったのだと、より一層大蛇丸に感謝の念を募らせる。その義手自体が自分の首を絞める武器そのものだとも知らずに。
アタッチメント式の義手。その手首を外すと、空洞が顔を覗かせる。
我愛羅のいる鯱と対になっているもう一つの鯱。それに照準を合わせる。砂の波に押し寄せられる直前、空洞から縄が飛び出した。蛇の如く鯱に飛び掛かる。先についた鉤が鯱の尾を捕らえた。己の身がぐいっと屋根上に引き戻される。
義手に仕込んだ鉤付き縄で砂波を脱するザク。だが窮地は脱してやいなかった。我愛羅の瓢箪から砂が再度溢れ出す。荒れ狂う砂海が鯱ごとザクを襲った。鯱も砂の海は泳げない。
「ぐあ……ッ!?」
纏わりつく。視界を砂に覆われる刹那、我愛羅が右手をゆっくりと握り込んだ。突風が吹き抜ける。
「【砂縛柩】……――――【砂瀑送葬】!!」
空中で音も無く弾ける。風の演奏会を邪魔した不届き者は、血の一滴すら残さず消えた。ぱらぱらと落ちる砂を仰ぐ。発動した術の名残を何の感慨もなく見遣った後、我愛羅は再び鯱の頭に腰を掛けた。夜風を頬に感じながら瞳を閉じる。
鈴は変わらず、美しい音を奏で続けていた。
俺は死んだのか――――。
朦朧とする意識の中、ザクは瞼を抉じ開けた。まず目についたのは中空に煌々と坐している月。そして月よりも強烈な光芒を放って見える、黄金の髪。
「仕込み武器か…。考えたね」
おそらく先ほどの砂の攻撃で肩から外れたのだろう。見覚えのある顔が、ザクの義手をまじまじと眺めていた。
「着眼点は悪くない。でももっと君に合った装備の仕方があるはずだよ」
ザクを我愛羅の術の餌食から助け出す。それも風のように
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