20years ago ”Beginning of the world”
#03
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。加えて、大抵の場合が高価に釣り合わないほど安い。初期だけでなく、中盤、終盤になってもこの店の存在には助けられた。
商店街の裏道のさらに奥、天幕に覆われた、木造りの古い店、その入り口。ユキハルは店の中に入ると同時に、店主の名を叫んだ。
「シェヘラザ!居るか!?」
「……ここだ」
「のわ!?」
声が聞こえてきたのはすぐ左側だった。
そこにいたのは、形容するなら『怪しい』としか言いようがない少女……否、幼女だった。年のころは12歳ほど。褐色の肌を毒々しい色のターバンや、暗い色のヒジャープと呼ばれる全身を覆う服を纏っている。その眼だけが奇妙な緑色。当然ながら、その造形はβ時代をはるかに超える。
彼女の名はシェヘラザ・アルハザード。この店の店主だ。12歳ほどの外見をしてはいるが、実年齢はもっと上だ。
「何度も言っているだろう。私を名前で呼ぶなと。アルハザードと呼べ」
「へいへい」
β時代に何度も交わしたやりとりを思い出しながら、ユキハルは心の中で確信となったその事実に、驚愕する。
やはり、NPCにβテスト時代の記憶が残っている。下手をすれば、全てのギルドを束ねる《大本部》にも、β時代の記録が残っている可能性がある。キャラクターデータは抹消されているのに、ゲーム内での行動の記録は残っている。一体どうしたことか。
「なんだ、随分よわっちくなったようだな。この三か月の間に何があったんだ?」
「え?」
シェヘラザの言葉に疑問を覚え、ユキハルは彼女に問いかけてみる。
「なぁ、シェヘ……アルハザード、俺がいなかった間、俺は何をしていたことになっているんだ?」
「なんだ?自分のことすら忘れたのか?……お前たち《プレイヤー》は、三か月前に突然行方不明になったんだ。お前たちがいない間に、一部の土地は姿を変えてしまったところもあるぞ」
「……なるほど……」
《プレイヤー》は一種の種族として扱われているらしい。行方不明になった、というのはキャラクターデータの消滅を表しているのだろう。土地の改変とは、恐らくプレイヤーに所有権があった建造物や土地の所有者情報がクリアされた、という事だ。やはり、きちんとβテストと正式サービスの区切りはついているようだ。
だがしかし、それならばなおさらNPC達にβ時代の記憶があることが疑問に思われてくる。もともと、この世界のNPCは『学習』するため、普通のVRMMOならば顧客の顔など覚えないNPC店舗従業員でも、プレイヤーの名前や好みを覚えていた。その一環で、βテスト時代の記憶を保持している、とでも言うのだろうか……。
「ごめん、ヘンな質問して」
「構わないさ。お前には世話になった借りがあるからな」
「そうか。また薬草とか足りな
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