第五章
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なのだ」
「どうしてもそう思えましたが」
「確かに狐の話は多いがな」
中国では狐の話がかなり多い。日本のそれよりも多い。それだけに何かあると狐ではと思うことが日本よりも多いのである。そういうことであった。
「だが。今回は違う」
「はあ」
「それにだ。ひょっとすると」
ここでその狐の面を手に取った。
「私もそうなるかもな」
「旦那様もですか」
「このままあれと一緒にいる」
言うまでもなくチュンレイのことである。
「するとこの顔も変わるかもな」
「お顔がですか」
「そうだ。考えてみればそれもいい」
こう述べて微笑んでみせる。
「夫婦で同じ顔になるのもな」
「ですか」
「そうだ。ではこれを買おう」
今手にしている狐の面を見る。そうしてまた言う。
「贈り物にな」
「奥様への」
「似ていると思わないか?」
その面をリーに見せての言葉であった。
「チュンレイに」
「確かに」
「だからだ。あいつがこれを見たら」
自分でもその面を見ながら言う。言いながら微笑む。
「どんな顔をするかな」
「楽しみなのですね」
「これからのこともな」
こうも言うのだった。
「子供の顔も。私の顔も。どうなっていくのか」
狐の面を見ながら話す。次第に自分の顔が妻のそれに似てくることを願いながら。これからのことに思いを馳せて優しい顔で狐の面を見ているチャンであった。
チャイナタウンの狐 完
2008・3・7
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