第一章
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ね」
「鮑ですか。それなら」
「そうだね。あそこがいいな」
昔から馴染みの店である。いつも干し鮑はそこで買っているのだ。
「あそこで買うとするか」
「はい、それで他には」
「他には海鼠か」
中華料理の高級食材の一つである。
「それも買っておこう。それで後は」
「何を買われますか?」
「後は行ってから考えよう」
こう答えるのであった。
「いい食材があれば集めておく」
「左様で」
「とりあえず今日買うのは乾物だけだしね」
その予定であった。他の食材は今のところは昨日のうちに買い揃えている。だから今日はそれだけでよかったのである。
「そういうことだ。それじゃあ」
「わかりました。それでは」
「買い終わったらすぐに店に戻ろう」
こうも言った。
「それで仕度をして」
「開店と」
「今日も忙しくなるぞ」
今度は楽しげな顔になった。経営者として店が忙しくなることは結構なことだ。だからその顔を楽しげなものにさせているのである。そういうことなのだ。
「何かとな。それじゃあ」
「はい、買ってすぐに戻って」
「仕込みだ」
そんな話をしつつ買出しをして帰路につく。その帰路でのことであった。
不意に一行は一人の女と擦れ違った。若く黒い髪を腰まで伸ばした背の高い黒い目の女だ。すぐにアジア系の女だとわかった。
「!?今のは」
「どうされました」
「いや、奇麗な女の人だと思ってね」
こうコックに答える。帰路もやはり市場で様々な人が行き交っている。その中でのことだった。
「あんな人がここにいたのか」
「何だかんだでここも大勢いますからね」
コックがこう答えた。
「けれど。どうされました?」
「いや、別に」
まずは言葉を打ち消した。
「何でもない。では行くか」
「はい、それでは」
とりあえずその場は何もなかった。チャンはレストランに戻ると早速社長室に入って仕事に取り掛かった。商売は繁盛しているので仕事は忙しい。気付いた時にはもうかなりの時間になっていた。外が暗くなっている。その暗くなった窓の外ではチャイナタウンのネオンが様々な光を放って輝いている。彼はその光を見ながらこれからどうするか考えていた。
「飲みにでも行くか」
とりあえずはこう思った。
「飲むとしたら。そうだな」
チャイナタウンの中に馴染みの店が結構ある。その中の何処かに行こうと思っていたのだ。何処に行くかまでは考えていなかったがそれでも飲みに行くことにした。そうしてその中で外に出てそのまま足が向かうままに街を歩く。夜でもこの街は活気がある。しかし警戒もしていた。
「この道は。やばいな」
暗い道はあえて通らない。ニューヨークは治安がよくなったと言われているがそれでもそれ程いいとは言えないのだ。特にこのチャイナタウ
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