第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
三十七話 傷つきし者達
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僕が郷に帰りついた頃には太陽は沈み夜の戸張が降りていた。街中では松明の火が彼方此方で灯り復旧作業うが続けられており僕は状況の確認の為に街中へと降り立つ。するとそこで見知った後姿を見掛けたので声をかけるとその人物が振り向きこちらに歩み寄ってくる。
「おぉ七枷殿、今お帰りか」
「うん今さっき帰り着いたよ、久しぶり岩さん」
友神である岩さんこと猪飼岩暫にそう返事をする。
「それにしてもどうして此処に?」
「八坂殿より伝聞が届いてな、村長に事情を話し郷の復旧に駆けつけたのだ。まぁ良くも悪くも七枷の郷の惨状は神や妖怪の間に知れ渡っておる」
なるほど神奈子が周辺の神に郷の復旧と警護を発令したのか、確かにこの惨状が僕に恨みを持つ妖怪達に知れたら勘違いをして郷を襲ってくる可能性もある。
「それにしても思っていた以上に被害が大きかったが死者は出ておらぬ様だぞ、不幸中の幸いか。まぁ重傷の者も少なくないらしいがな」
恐らく神奈子や諏訪子が張った結界が最悪な事態を防いだのだろう。岩さんの言う通り不幸中の幸いは死者が出なかった事だ。
僕と岩さんがそんな話をしているとこっちに走って来る影が見える。近くまでやって来て松明の灯りに照らし出されたのはにとりだった。
「あっ!やっぱり七枷様じゃないか!何だか大変な事になってるね!」
大きな緑色のリュックを背負い息を切らせながらそう言って来るにとり。
「にとりも郷の復旧を手伝ってくれてるの?」
「あったり前じゃん!こんな時こそ助け合いだよ!まぁ普段から七枷様とかには助けられっぱなしだしね!」
にとりは えへへへ、と笑いながらそう答えた。周りに視線を巡らせてみれば忙しなく動き回る町の住人達に紛れ土地神や人型の妖怪や瓦礫を持ち上げている二メートル程の狼型の妖怪、荷物を積んだ荷車を糸で引いている牛よりも大きい蜘蛛型の妖怪、空を飛びまわっている鳥型の妖怪等がおり何とも不可思議な光景を造り出している。
人、神、妖怪がこの郷の為に力を合わせている、その光景を見ながら僕は無意識に言葉を吐き出していた。
「…不思議な光景だよね」
僕の呟きに岩さんとにとりは顔を見合わせ、同時に笑い出した。
「不思議か、確かにその通りだな。きっと中心になる者が変わり者故に周りに変わり者が集まってきたのだろう」
笑いながらそんな事を言う岩さんににとりが合いの手を出す。
「そういう事ならこの郷の関係者のわたし達も変わり者ってことだよね!岩暫さん!」
「そうだなその通りだろう河城殿、我らもまた変わり者だ」
そんな事を言う二人に僕も言葉を返す。
「なるほど、それじゃぁこれからも変わり者同士仲良くしようか、なんてね」
そして三人揃っ
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