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女房の徳
第六章
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そですわ。けれど」
「それを知って頃合が来たら」
「離れてさらに上を目指すものですわ」
 そういうことであった。この僧侶もその頃合を見て遊んでいるのである。遊びを知らなければ遊びから離れられず、煩悩を知らなければ煩悩から離れることはできない。そういうことである。何かから離れるにはその何かを知らなくてはならないのである。
「ですから」
「そうですか」
 菊五郎は何か自分がより上に達しようとしているのを感じていた。それが嬉しくもありそれでいて寂しくもあった。その寂しさも今語った。
「しかしでんな」
「何かおますか?」
「いや、嬉しいですけど」
 苦笑いで以って言う。
「寂しくもあります」
「寂しいでっか」
「そうですわ。今までの自分から離れるさかい」
 笑ったその顔も寂しいものが混ざっていた。そうして語る。
「それがどうも」
「それはわかりますわ」
 僧侶の方も彼のその言葉を聞いて言う。
「何だかんだで親しんできましたやろ」
「ええ」
 その寂しい笑みのまま僧侶の言葉に頷く。

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