少女の慟哭
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の夜。彼女が生きてくれと願ったのはどんな自分であったのか。
白蓮の好きな牡丹の元気な笑顔を思い出す度、胸に激痛が走る。甘ったるい声で後ろを付いて来た姿を思い出す度、胸が締め付けられる。
――私は……私を殺す事で牡丹を、牡丹の想いを殺し続けている。
自分で愛する臣下を死地に追い遣り、さらには残してくれた想いまで殺し尽くそうとしていた。そう気付いてしまうと……ずっと流す事のなかった涙が流れた。
「……じゃあ……わ、私は……どうすれば、いいんだよ……?」
引き絞られるような声が漏れ出て、助けを求めるように彼に瞳を向けるも、一つ二つと零れ続ける涙は止まろうともしない。溜め込んで溜め込んで、漸く堰を切った哀しみの感情はもはや止まる事は無かった。
「さあな、自分で答えを思い出せ。ただ、今のお前は……牡丹が守ろうとした、あいつの大好きだった白蓮だけどな」
止めを刺したのは二人を見てきた秋斗の言葉。同じ立ち位置を持つ星であっても同じ事が言えたであろう。しかし彼女は臣下でもあり、白蓮は自身の堅い決意に口を出されたのなら、必ずその言を跳ね除けてしまう。想いを共有しつつ、ただの白蓮として認めている相手でなければ、彼女の心の奥底まで伝わる事は無かった。
白蓮は自分の身体を両腕で抱きしめて、込み上げる嗚咽を堪えようとした。それを見て、秋斗は彼女の身体を抱き寄せて腰を降ろし、床に胡坐をかいた自分の膝に乗せる。もう我慢しなくていい……そう伝えるように。
人の温もりを感じてしまうと、もう白蓮には我慢する事は出来なかった。
「……だ」
小さく開いた口から、ぽつりと小さく言葉が漏れた。
「……やだ」
はらはらと落ちる涙は瞼を閉じようとも留めようも無く、
「……嫌だ」
自然と、誰かを求めようと腕が回され、彼の温もりに全てをぶつけ始める。
「……嫌だっ……嫌だよ秋斗! 私はっ……もうあいつに会えないなんて嫌だ! 会いたい! 牡丹に会いたい! 皆で楽しく、暮らしてたのにっ……どうして私はこんなに弱いんだ! 私のせいで死んじゃったんだ! 私が牡丹を殺したんだ! 私は皆を守れなかったんだ! もう嫌だ……こんな苦しい世界……嫌だよ、秋斗ぉ……っ!」
堪えてきた叶う事の無いわがままと、自身への呪いをぶつけ、白蓮は大声で泣き叫んだ。
秋斗は、そこで何かを言う男でも無く、ただ抱きしめて、背中を撫で始めた。ゆっくりと、子供をあやすように。
それでも哀しみは止まらず、白蓮は力を強めて秋斗の身体を抱きしめて泣き叫び続ける。
ここには白馬の王は居らず、愛する者と家を失った寂しがり屋な少女の姿があるだけであった。
白蓮がどれだけ家の事を想っていたのか、どれほどの重責に耐えてきたのか、どれだけの
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