少女の慟哭
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した。これから白蓮を傷つける事を決めて。
「クク、まあこのままじゃ……牡丹が守りたかったモノは、なんにも残りそうも無いけどな」
茫然と、白蓮は秋斗の事を見やった。一瞬、何を言っているのか理解出来なかった。
遅れて、凍りつくような冷たい視線を跳ね返して、白蓮は静かな怒りを叩きつける。
「どういう……事だ? お前は……あいつが無駄死にしたとでも言いたいのか」
自身を生かしてくれた牡丹の行動を無駄な事だったと言って退けたのだから当然の事。しかも白蓮個人に対して言われた為に、戦を思い出してささくれ立ってしまうのは仕方がない。
「お前には……この髪留めは似合わないって事だよ白蓮」
睨み合い、少しの沈黙の後、首を振って告げられた言葉に白蓮の心は曇っていった。
「……あいつと一緒に取り戻そうとして何が悪い」
ぽつりと零された一言に、秋斗はやっぱりかと確信に至って呆れかえった。
――きっとここについてから髪留めをずっと付けていたんだろう。牡丹と共にあれるようにと。
優しくて責任感が強い白蓮らしい行動ではある。誰しもが彼女らしいというだろう。だが、二人の友である秋斗にとっては認められない。
「お前なぁ……これは牡丹の髪留めだ。あいつが白蓮になろうとするのは仕方ない事だったが、お前がそんなあいつと混ざろうとするな」
厳しい瞳で告げられて、白蓮の表情が苦悶に歪む。同時に、秋斗は将である為に自分の事を何も分かってくれないのだと哀しい気持ちも湧いてしまった。
「……っ……返してくれ」
「お前が付けても似合わないんだから大切にしまっておくと約束してくれるなら返す」
「……似合わなくてもいいんだ。返してくれ」
縋るように伸ばされた手。白蓮の瞳がぶれているのが見えて、白蓮は牡丹の髪留めを決意の証としている、と読み取った秋斗は無情にも弱い部分を突きつける。
「牡丹に憧れられていたお前だけはこれをつけちゃいけないんだよ。それにな、あいつが命を張って逃がそうとした白蓮は寂しがり屋で、甘くて、優しい奴でもあったはずだ。なのに今のお前は……牡丹を跳ね除け続けた昔のまんまじゃねーか」
言い聞かせるように、しかし冷たく告げられる中、甘さという言葉を聞いて白蓮は感情を抑える事が出来なくなった。
「知ったような口を聞くなよ秋斗! 私が……私が甘かったせいで多くのモノが犠牲になって、あいつは死んだんだ! あいつが何度も裏切りの警告をしてくれたのに中途半端な決断をしたから最悪の事態に追い詰められた! もうあんな思いはたくさんだ! これ以上私の甘さで殺してしまうくらいなら……甘さなんかいらないんだよ!」
秋斗は怒鳴られて息を呑んだ。白蓮の瞳は自身への憎しみで染まりきっていた。それは
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