少女の慟哭
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事だが……雛里がいれば問題は無い」
にやりと笑った星は愛紗と自分の杯に酒を注ぎながら、己が恋敵ならば大丈夫だと伝える。
あと二杯だけだと無言で指を立てて厳しく線引きをした愛紗は、確かにそうかもしれないと優しい瞳で笑いかけて、杯を上げた。星も杯を打ち合わせ、互いに新たな友を得たと感じ合った。
二人の夜は更けて行く。周りの大切なモノ達が救われる事を願って。
†
時間効率を考えて引き継ぎは書簡にて行い入れ違いになるように行軍するべしとの指示に従い、桃香達と出会わぬまま本城に到着した秋斗は、連れ帰ってきた徐晃隊に幾日かの休暇を言い渡し、簡易な仕事を終えて、夜に白蓮のいる部屋を訪ねた。
小さくノックを二回、どうぞの返事と共に扉を潜り、秋斗は友との再会を果たす事となった。椅子に座っている白蓮は血色が良く、いつも見ていた服では無く、ゆったりとした服を着ているので傷も見えない。ただ、髪を牡丹の髪留めで纏めているのを見て、秋斗はほんの少しだけ目を細めた。
「……ただいま、白蓮」
「おかえり、秋斗」
ふっと笑い合っていつかのように挨拶を交わし、折り畳みの椅子を引き出した秋斗は腰を下ろす。
白蓮は心の内に嬉しさが込み上がった。『ただいま』という事は、秋斗は白蓮のいる場所を家と思っているのだ、そう感じて。そこからはどちら共に話すでも無く、互いに見つめ合うだけであった。
対して、穏やかな瞳に見つめられている秋斗は何を話していいのか分からなかった。白蓮が昔のいつも通りのように見えたから。ただ牡丹の髪留めを戯れにつけているだけだと……心が事実の受け入れを拒絶していた。
これが桃香であるならば、何か言葉を紡いで無理やりに雰囲気を変えたであろう。秋斗にはそれが出来ない。ぐちゃぐちゃになった頭では何も考えられなかったのも一つ。
なんとも言えない表情の秋斗を見て、白蓮は呆れたように小さな息をつく。
「相変わらず気遣いばかりだな、秋斗は。私は大丈夫だ。ここで休ませて貰って随分と落ち着いた。それに私の無力で負けたんだから、何も気に病む事は無いぞ。むしろお前のおかげである程度戦えたし、生き残れたんだから私が感謝しないといけないくらいだ」
「いや……うん。白蓮が無事で良かった」
凛とした声が耳に響いて、微笑んだ白蓮が語る様子を見て、柔らかく答えながらも秋斗は思考が正常に回りだし、違和感を明確に感じ取る。
――そのザマの……どこが大丈夫なんだよ、バカが。
記憶を引きずり出して一致するのは出会ったばかりの白蓮。必死で自分を追い込んで、誰にも弱みを晒すことなく、切り詰めて切り詰めて、自分を殺して期待に応えよう、誰かに認められようと努力し積み上げるその姿。壊れてしまいそうだった少女の姿。
こ
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