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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 踏絵
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れば経済振興政策の財源にも出来る。帝国の金で発展出来るのだ、同盟市民のプライドをくすぐるだろう。

「しかし毎年二千億帝国マルクを払ったとしても六十年だ。帝国は嫌にならんかね、払い続けるのを屈辱に感じるんじゃないかと思うが」
リウが問い掛けると彼方此方で頷く姿が有った。同感だ、同盟市民の優越感はそのまま帝国の屈辱になる。リウの心配はおかしなものではない。ヴァレンシュタインはどう考えているのか。様子を窺うと彼は苦笑を浮かべていた。どうやら失望しているらしい。

『十年後の宇宙を想像した事が有りますか?』
「……」
皆が顔を見合わせた。
『和平を結べば十年後には間違いなく人類の総人口は増加しているでしょう。経済活動も盛んになっているはずです。それが何を意味するか? ……帝国も同盟も税収は増えている。そして和平が長く続けば続くほど人口は増加し税収も増加する。それに反比例して国家予算における国債償還額の占める割合は小さくなっていく』

彼方此方で唸り声が聞こえた。戦争が無くなれば戦死者が居なくなる。つまり働き盛りの三十代、四十代の人口が増え続けるという事か。間違いなく税収はアップするだろう。ホアンの心配する熟練者の空洞化も解消する。
『僅かな金額を払う事を止めれば両国の信頼関係が悪化します。場合によっては戦争という事にもなりかねない。その事に意味が有りますか?』
また唸り声が聞こえた。

『意味が有りませんね。国債の償還は和平が長く続けば続くほど金額よりも和平の象徴としての意味合いが強くなるでしょう。先程言いましたが安全保障費の意味合いが強くなる。まともな判断力があれば払い続けますよ。それを打ち切るような馬鹿であれば最初から和平など無理です』
彼方此方で溜息を吐く姿が見えた。和平が明確に見えてきた、そう思った。




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