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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 踏絵
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フェザーンを救うことが出来る強者は同盟だけです。だから我々は非常識に行動する』
ヴァレンシュタインが笑う、ボルテックが天を仰いで絶望の呻き声を上げた。

『二千億ディナール用意してください』
『……』
『フェザーンは同盟軍の軍事行動に対して二千億ディナールを前払いで全額払う』
『……』
ボルテックは唇を噛み締めたまま無言だ。払えない金額ではない、屈辱が素直にウンと言わせないのだろう。ヴァレンシュタインが若いという事も影響しているかもしれない。

『フェザーンの人口は二十億人です。一人頭百ディナール払えば貴族連合軍を打ち払える事になります』
『……分かった。二千億ディナールを用意する』
已むを得ない、そんな心の声が聞こえそうな口調だった。それにしても完勝、だな……。

『先の二条件の実行、そして二千億ディナールが同盟政府に支払われた段階でフェザーンに進撃します。大体二週間程度で着くでしょう、貴族達には同盟軍が進撃を開始した、三週間後にフェザーンに来ると教えてください』
『分かった』
ボルテックが答えるとヴァレンシュタインがトリューニヒトに視線を向けた。

『私からは以上です』
トリューニヒトが皆を見回した。誰も口を開かなかった。いや視線を合わせる事を避けている人間も居た。
「御苦労だった、ヴァレンシュタイン中将。ボルテック自治領主閣下、早速だが中将との約束を果たして欲しい。こちら側の実務担当者はレベロ財政委員長だ。レベロ、頼むよ」

頷いてからスクリーンに視線を向けるとボルテックと眼が合った。ボルテックは準備が有るからこれで失礼すると言って通信を切った。恨めしそうに私を見ていたと思う。後で愚痴でも聞かされるかもしれない。公人としては間違った事をしたとは思わないが何とも後味の悪い事だ。

少しの間沈黙が有った。多分私と同じように後味の悪さを皆が感じていたのかもしれない。嫌な空気を振り払うように頭を振るとトリューニヒトが話し始めた。
「十二兆帝国マルクの国債か。膨大なものだがこれはどうなのかな、償還されるのか? 所詮は紙切れという事か?」
「まあ確かに帝国が同盟に対して十二兆帝国マルクも払うとは思えんな」
ボローンが答えると皆が頷いた。確かに有り得ない。今回はフェザーンに利用されなかった事で良しとすべきなのだろう。

『そんな事は有りません。払える状況を整えれば良いのです。状況が整えば帝国は払いますよ。難しい事じゃない』
ヴァレンシュタインの言葉に皆が顔を見合わせた。我々だけじゃない、スクリーンの中の軍人達も驚愕している。

「正気かね、中将。いや、君を疑う訳じゃないが信じられんのだが」
「状況とはどういう状況かね?」
ホアン、トレルが疑問を呈するとヴァレンシュタインは“それほど難しくは有りません”
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