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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九話 踏絵
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ンは人類共通の敵に与する存在だと認定する。そしてこの宇宙から消滅させる、これは同盟政府の総意だ。ヴァレンシュタイン中将はそれを言っているに過ぎない」
ボルテックの顔が強張った。目論見が外れたか。
『……馬鹿な、何を言っているのか分かっているのか? フェザーン人の殆どが地球教とは無関係なのだ。それを問答無用で殺すと言うのか』
『殺しますよ、貴方が証拠を示さない限り殺します。貴方が殺させるんです』
ヴァレンシュタインの言葉にボルテックが“卑怯な”と呻き声を上げた。ヴァレンシュタインが声を上げて笑った。トリューニヒトも笑う。鬼畜の笑いだ。
『その言葉はそのまま貴方にお返ししますよ、ボルテック自治領主閣下。ところで如何なのです、未だ回答を頂いていませんが』
ヴァレンシュタインが回答を促すとボルテックがもう一度呻いた。
『……分かった、国債は全て同盟に譲渡する』
約十五兆ディナールの国債と約十二兆帝国マルクの国債か……。とんでもないシロモノだな。どう考えれば良いのか……、彼方此方で息を吐く音が聞こえた。
『ではもう一つです。フェザーン政府が所有するダミー会社、全て同盟政府に譲渡する事。意味は分かりますね?』
『……』
ダミー会社? そんなものを貰って何の意味が有るのだ? だがボルテックは顔を強張らせている。何か有るのか? 訝しいと思ったのだろう、皆が顔を見合わせた。
「ヴァレンシュタイン中将、そのダミー会社とは何かね?」
ヴァレンシュタインが発言者をジロリと見た。
『発言は私の許可を得てからと言ったはずですが』
トレルがバツの悪そうな表情をした。ヴァレンシュタインが冷たい目で見ている。まあ悪いのはトレルだが相変わらずきついな。
『フェザーンはダミー会社を利用して同盟、帝国、フェザーンにおける基幹企業、利権をフェザーンの支配下に置こうとしたのですよ』
“馬鹿な!”、“本当か!”、“何を考えている!”という声が彼方此方から上がった。スクリーンからもだ。私自身叫んでいた。
『フェザーンは国債を買う事で財政面から同盟、帝国を絡め取りダミー会社を使って基幹企業を支配下に置く事で経済面から同盟、帝国を自由に操ろうとした。何のためかは言うまでも無い。そうですよね、ボルテック自治領主閣下』
皆がスクリーンに映るボルテックを見た。顔面が蒼白になっている。ヴァレンシュタインの言った事は事実なのだろう。漠然とだが経済面でフェザーンの影響力が拡大している事は分かっていた。だが具体的に脅威が明らかにされた事は無かった。そうか、国債と基幹産業か……、それによって財政、経済を支配しようとした。フェザーンの傀儡になるまであとどれくらいの猶予が有ったのだろう? 五年か、それとも十年か……、背筋に寒気が走った。
『如何しますか、ボルテッ
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